少年期[580]キレる時はキレる
「てか、二人は今日一日どうだったんだ?」
「……絡まれたわよ」
「私も絡まれたな」
二人は別行動していたのだが運悪く面倒な輩に絡まれてしまった。
そんな二人の報告にゼルートは思わず小さく笑ってしまった。
「ははっ、なんだ……二人も狙われてたって訳か」
「狙われていたっていうのは少し違う気がするけど、とりあえず絡まれたのは確かね」
「私もだ。まぁ、私に絡んで来た連中はある程度話が解る奴だったな」
一緒にご飯でもどうですか? そう誘われたルウナは興味が無かったのであっさりと一蹴した。
それでも折れなかったナンパ君。なんとかルウナの気を引こうと頑張る。
ちなみにご飯を誘ってきた男はそこそこワイルドイケメンな男だった。
同じ獣人として魅力的なルウナと交流を持ちたいという欲が漏れていた。
だが、そんなナンパ君に対してルウナは鋭い目を向け、怒気を溢れさせながら再度断った。
するとその怒気に恐れてナンパ君は一歩下がってしまう。
自分がご飯に誘うとしていた女性に対して下がった。それは自分が女性の強さに恐れていると本能が反応した。
獣人であるナンパ君はそこら辺のセンサーが敏感であり、これ以上誘いを続けていたらぶっ飛ばされるかもしれないと思って諦めた。
「へぇ~、そりゃ珍しいな。ちゃんと相手の力量が解る奴だったのかもな」
「かもしれないな。別に顔は悪くなく、弱いという訳でもなかったが……いまいち魅力は感じなかった」
そもそもルウナは自分より強い相手しか基本的に興味が無い。
ルウナの言葉通り、ナンパ君の実力は決して低くはなかった。
だが、それでもルウナが満足出来るほどの実力は有していない。
「ルウナは自分より弱い相手に無関心だもんな。それで、アレナはどうだった?」
「……あんまりにもしつこいから二人共沈めたわ」
アレナに絡んで来た相手は美形寄りの男二人組。
ルウナの時とは違い、二人はアレナをデートに誘ってきた。
年頃の娘であれば誘いに乗ってもおかしくない二人。だが、アレナもルウナと同じで声を掛けてきた人物に興味を持たなかった。
二人からの誘いをあっさりとアレナは断るが、そこで美形君達は諦めなかった。
アレナがその場から離れようとしても前を塞ぐようにして立ち、ナンパを続ける。
自分達がどれだけ凄いのか、どれだけ強いのかは自慢げに語る二人。
だが、そのどれもがアレナからすればどうでもいいと感じる内容であった。
二人が身に着けている装備は確かに少々レベルの高い物。
しかし二人がその装備を身に着けるに値する実力なのか……アレナは似合っていないと直ぐに思った。
一人が自分達は貴族の子息なのだと漏らしていたが、その内容を使ってもアレナには大した効果は無い。
面倒だと感じるが、こんなダンジョン都市で貴族の子息だというしょぼい権力を振りかざしても相手が相手なら逆に潰されてしまう。
ゼルートは権力者相手に対応が振り切れ過ぎているが、アレナも堪忍袋の緒が切れれば容赦ない対応を取る。
そしてあまりにもしつこく、アレナが冷たいた対応取っているのにも拘らずナンパは続き、周囲の人達も徐々に反応し始める。
あんまりにも断り続けるアレナに痺れを切らし、一人が手を掴んで強引に連れて行こうとする。
だが、その瞬間にアレナの拳が男の腹にめり込んだ。
勿論本気パンチではない。本気ではないが……それでもまだまだルーキーより少し上程度の実力しかない男を鎮めるには十分な威力だった。
仲間が潰されたことでキレたもう一人の男はアレナに掴み掛かろうとするが、そんな馬鹿に対してアレナは先程の男と同じく拳を腹に叩きこんだ。
そして二人は仲良くノックアウト。
その場から離れて行くアレナに向かって言葉を放ち続けるが、無視して去って行った。
「ぶっ、はっはっは!!! 良いじゃん、どこの馬鹿だか知らないけど言って聞かない奴は潰すのが一番だ」
「そうだそうだ、ゼルートの言う通りだ。なにも落ち込むことは無いぞアレナ!!!」
少々気落ちしているアレナとは真逆で、二人はいつも通り良い笑顔で笑っていた。
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