少年期[574]気まぐれ
「……結構寝たな」
デリックとオーラスとの夕食が終わって就寝した翌日、ゼルートは昼間で二度寝を楽しんでいた。
一度目の目覚めで完全に起きる事も出来たが、二度寝をしたい気分だったのでアレナ達に二度寝すると伝えて再びベッドに入り込んだのだ。
(別に夜更かしとかしてないんだけど……それでも二度寝は最高だな)
結果的に半日以上も寝ていたゼルートだが、特にね過ぎで体が痛いということも無く、ゆっくりとベッドから降りた。
「さて、とりあえず朝食……じゃないな。昼食を食べよう」
下に降りて胃袋に優しいご飯を食べ、折角の休日なので街に繰り出すことにした。
「……やっぱりダンジョンを管理してる街って栄えてるよな」
ダンジョンが有るか無いかでその街の経済力が変わる。
そう言っても過言では無い。
それ程までにダンジョンは重要な存在。
ただ……生まれたてのショボいダンジョンだとものによっては成長するまでに時間が掛かるので、どうせならとダンジョンの核を取って消してしまうパターンもある。
(ダンジョンがある、それはメリットも多いけど管理する側の労働や責任? を考えると両手を上げて万々歳って訳じゃないんだろうな)
そう考えながらもぶらりぶらり……すると途中、露店に売られているアクセサリーの一つが目に入った。
赤い宝玉が埋め込まれた指輪。値段は銀貨五枚。
一般的に考えれば少々高いと思われる値段だが、立ち止まって鑑定眼を使ったゼルートはその効果に驚いた。
(……はっ!!?? これが銀貨五枚だと!? あり得ねぇ……ちゃんと調べてないのか?)
指輪の名は赤鬼の怒気。身に着ければ腕力が少し強化される……ただ、それは表向きの効果。
指輪にオーガの魔石を三百個吸収させることで真の効果が発揮される。
(身体能力を大幅に上昇させることに加えて一時的に再生能力を得る……それに反射速度の上昇まで付いてやがる。なんなんだこのマジックアイテムは……絶対に金貨何百枚、白金貨何十枚……まではいかないか。でも、白金貨一枚以上の価値は絶対にある筈だ)
「兄ちゃん、この指輪が気になるのか?」
「あ、あぁ……ちょっとな。おっちゃん、これ本当に銀貨五枚なのか?」
「おう、赤鬼の怒気って大層な名前だがランクはニ。効果は腕力が少し強化される。その効果を考えれば妥当な金額だと思うぜ」
露店の店主は鑑定のスキルを持っているが、レベルは三。
赤鬼の怒気の真の効果を視るのにはレベルが足りないのだ。
そこでゼルートはアイテムバッグの中から紙をペンを取り出して店主に伝えたい内容を書き始める。
当然、店主は突然の行動に疑問を持つ。
「どうしたんだ兄ちゃん、いきなり紙とペンを取り出してよぉ」
「おっちゃん……大声を出さずにこれを読んでくれ」
内容を書き終えた紙を店主に渡すゼルート。
訝しげな表情で紙を受け取った店主は紙に書かれた内容を視て、目を見開いて驚いた。
ただ、その内容を直ぐには信じられなかった。
「兄ちゃん……これは本当か?」
「本当だ。多分、鑑定のレベルが低かったら視えないようになってると思う。因みに俺はギフトとして持っている」
「そ、そうか……しかし、流石にこれは……本当だったらどれ程の額になるんだ?」
「そりゃ俺も解らない。冒険者として活動してるから値段まではなぁ……ただ、それが銀貨五枚以上の値段で売れるのは確実だ。そうだなぁ……本当の内容が視える鑑定士に視てもらって、鑑定書を貰う。その後に信用出来るクランに売ったらどうだ」
ホーリーパレス程の規模が大きいダンジョンがある街ならば、そのダンジョンの攻略をメインに活動しているクランが存在する。
その辺りをゼルートは詳しく知らないが、実際この街には大なり小なりそこそこな数のクランがある。
「そうか……分った。こいつは一旦持ち帰って鑑定士に視てもらう。ただ兄ちゃんよ……黙って自分で買えば良かったんじゃないか?」
安い値段で条件さえ整えれば強力なマジックアイテムが手に入った。
なのに、ゼルートはそうせずに赤鬼の怒気の真の効果を店主に教えた。
普通ならそんな事はせず、店主の言う通り買ってしまうだろう。
「えっと……気分だよ気分。何となくだ、気にすんな」
その言葉は本音であり、本当に気分的に店主に内容を教えても良いと思っていたのだ。
それと……実は既に似た様なマジックアイテムをゼルートは手に入れていた。
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