少年期[572]早速再会

「乾杯!!!!」


「「「「「「「乾杯!!!!!!!」」」」」」」


適当に入った酒場で偶然デリックとオーラスと出会い、ゼルート達はそのまま二人に夕食を奢られることになった。


「意外にも早く奢れる機会がきて良かったぜ」


「そうですね、約束をしても中々会えないものですからね」


ザっと酒や料理を頼み、テーブルにはどっさりと料理が置かれていた。


「それで、ゼルート達はあの後どこまで進んだ?」


「三十階層のボスは倒したぞ。まぁ、俺達はどうやら例外に当たったみたいだけどな」


「例外って事は……もしかしてあれか、リビングデットナイトと上位種のリザードのダブルコンビに当たったのか」


デリックは驚きのあまり口から零れそうになったエールを袖で拭う。

三十階層のボスが稀にリビングデットナイト二体と上位種のリザード二体と組んで現れるのは知られている。


知られているが、滅多に当たらないボスだ。


「俺達としては運良くって感じだったな。楽しい戦いができたな。なっ、アレナ」


「私は別に楽しんで無いわよ。鈍った体をほぐすには丁度良い相手だったけれどね」


ゼルートとアレナの発言に二人は思わず固まってしまう。


「も、もしかして二人だけで倒したのか」


「いいえ、私はラームと一緒に倒したの」


「殆どアレナ一人で倒したようなものだけどね!!」


オークのステーキにかぶりつきながらサラッと事実を漏らす。

その内容にデリックは感嘆した表情を浮かべる。


「すっげぇな。ゼルートは……やっぱり一人で倒したのか」


「あぁ、騎獣一体の敵と戦うのは初めてだったけど、あれはあれで迫力があったぞ。ランドリザードだったから空を飛ぶことは無かったけど、鋭い爪や尻尾にブレスだけでも十分に凶悪だったからな」


魔物の攻撃が凶悪だと言いながらも、ゼルートの表情は笑っている。

矛盾している様にも思われが、リビングデットナイトとランドリザードの連撃が凶悪だったのは事実だ。


「私も戦いたかったんだがな」


「ルウナはボスの前にサイクロプスと戦ってただろ」


いきなりのぶっ飛び発言にデリックとオーラスは口に入っていたエールを思わず吹き出してしまう。


「げほっ、げほっ……おい、ちょと待て。サイクロプスって……それってマジか!?」


「マジだよ。なっ、ルウナ」


「あぁ、マジだぞ。ゲイルと一緒に倒した……生まれたばかりだったからか、未熟さが感じ取れたがあの力はまさしくBランクのものだったな」


「ルウナ殿の言う通りですね。容易に地面にクレーターをつくるあの腕力……さすがに無防備な状態で食らえば重傷は免れないかと」


その言葉に嘘はない。

だが……二人は無傷でサイクロプスを倒してしまった。


生まれたばかりで未熟というのは間違ってはいないが、その身体能力だけで殺されてしまう冒険者は多い。


「ダンジョンイレギュラー、という訳ですね」


「だろうな。あの階層でサイクロプス並みの魔物が溢れてたら……地獄絵図だろ」


「激しく同意だな。そんな事があったのか……言い方は悪いが、ゼルート達が最初に遭遇したのが他の冒険者達にとっては幸運だっただろうな」


「別に悪いとは思っていないぞ。ゲイルと二人で戦ったが、それなりに強かったからな」


「経験を積んでいれば、もっと良い戦いになったでしょうな」


ルウナとゲイルにとっては本当に楽しめる相手だった。

だが、世間一般ではBランクの魔物は基本的に遭遇すれば逃げる一択。


退路がない場合は仕方なく戦うが、勝てる可能性はそう高くない。


「はっはっは!!! 流石覇王戦鬼の仲間だな。スケールが違い過ぎるぜ」


「あんまりその名前で呼ばないでくれ。ちょっと恥ずかしいんだよ」


「そう? 俺はカッコイイ二つ名だと思うけどな」


「カッコイイかもしれないけど、今の俺の外見には似合わないんだよ」


「そ、それはぁ……否定出来ないかもな」


「だろ。あっ、そういえばリビングデットナイトとランドリザードのタッグなんだが、ソウルコネクトまで使ってきたぞ」


「「ブーーーーーっ!!!!」」


再度落とされた爆弾のせいで二人はもう一度エールを吹き出してしまった。

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