少年期[541]我慢出来る受付嬢
(……うそ、この名前って……えっ!? 本当にあの子なの?)
ギルドカードには所有者の名前とランクが記されている。
受付嬢が受け取ったギルドカードに名前はゼルート、ランクはDと記されていた。
それを見て受付嬢は何度も目を瞬きして確認する。
(ランクDで名前がゼルートって……あの単独で悪獣を倒したって言われているゼルート!!?? 本当に、偽物じゃ無くて!?)
しかしゼルートが渡したギルドカードに偽りはない。
そしてゼルートの外見が噂で伝わってきた内容と殆ど一致する。
中には阿呆らしい噂もあるが、そういうのを除いた噂と合致しており、受付嬢は何度もギルドカードと生のゼルートを交互に見る。
「え、っと……本当にゼルート、さんで、よろしいでしょうか?」
受付嬢は周囲の人物達に聞き取れない様な小声で尋ねる。
おそらくここでゼルートがゼルートだとバレてしまえば、本人に迷惑を掛ける事になる。
なので受付嬢なりに配慮して小さな声で尋ねた。そしてそれはゼルートにとって嬉しい配慮だった。
「はい、それで合ってます」
「そうですね。ちゃんと合ってますよ」
「そ、そうですか。しかし、その……後ろの三人方はパーティーの方々でしょうか?」
「? ……あぁ~~、なるほど」
ゼルートは最初受付嬢の質問が理解出来なかったが、直ぐに何故そんな質問を投げてきたのか解った。
(そういえばギルドにはゲイル達が人の姿になれるって報告していなかったか? というか、それも噂で伝わっていると思うんだが……一応説明した方が良いよな)
「すみません、紙と書くもの貰っても良いですか」
「は、はい。かしこまりました」
何故紙と書くものが必要なのか解らないが、受付嬢はゼルートに紙と書くものを渡す。
(……もしかして後ろの三人は貴族の縁者なのかしら? 確かに雰囲気があるような……でも一人は完全に子供よね。本当に不思議な話が付いて回るルーキーね)
ゼルートの実力や実績を考えれば完全にルーキーと呼べれる代物では無いのだが、冒険者になってからの期間を考えればルーキーと言われても仕方がない。
伝えたい内容を書き終えたゼルートは紙を受付嬢に渡す。
そしてそれを見た受付嬢は……驚きのあまり、出そうになった声を抑える為に冒険者も驚くほどの速さで口を手でふさいだ。
しかしそれも周囲から注目を集めてしまうと思い、ゆっくりと深呼吸しながら口から手を離す。
「えっと……か、かしこまりました。直ぐにダンジョンの情報をお持ちします。ただ、あの……この件に関しては上に報告してもよろしいでしょうか?」
ゼルートが書いた紙を持ちながら上に伝えても良いか許可を取ろうとする受付嬢。
魔物が人の姿に変化する。それ自体は存在が確認されているが、一般人や有名な冒険者や騎士であってもそれを生で見られる者はまずいない。
(別に構わないっちゃ構わないんだが……別に面倒なことになりはしないよな。いや、やっぱりなるか?)
面倒事はなるべく避けたいが一番のゼルートだが、ゲイルたち従魔が人の姿になれるということは別に隠し切れるとは思っていない。
なのでいずれバレてしまうならタイミングはどうでも良いと思い、許可するという意味で頷く。
「良いですよ。ただ、この街には……ダンジョンには依頼を受けて来てるんで、あんまり時間を暇な時間は無いんで。それだけは覚えていてください」
「分かりました。絶対に覚えておきます」
真面目に今回は時間が掛かると思っている。
一般的なAランクのパーティーであっても聖魔鋼を手に入れるには相当な時間が掛かる。
そもそも宝箱からの入手しか方法が無く、それも確率が低い。
運が良ければ一発で手に入る可能性もあるが、何回宝箱を手に入れても中に聖魔鋼が入っていない可能性だってある。
(……いや、モンスターの素材を気にしなければ俺達が全力でボコボコにすれば結構短時間で手に入るか?)
ゼルートはソロでもSランクの魔物と渡り合える事が可能。そして他のメンバー達も尋常ではない実力を有している。
なのでボスの魔物がAランクであっても、大した時間も掛からず戦闘は終わる。
(さて、とりあえず今日はこの情報を全部見て飯食って、明日からがっつり潜っていこう)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます