少年期[518]分断した方が良いような

ギルドにやって来たゼルート達は当然の様に目立っていた。

ギルドに到着するまでに多くの人達にリザードマンの希少種、スライム、黄色い肌をした小さなドラゴン。そして美女と美少女を連れて歩く一人の少年。


何故あんな大した実力が無さそうな少年が中心にいるのか。

そう思う者が大半であるが、中にはゼルートがカジノで貴族の子息を相手に一対一の模擬戦を行い、圧勝したという話を聞いて注意深く見ている者もいた。


そしてそれはギルドに入ってからも同じであり、情報を耳に入れるのが早い者はゼルート達が実際のところはどのような人物なのかを観察。

相手の力量差を読めない馬鹿が三人に絡もうとするが、直ぐ近くに良い眼を持った冒険者がおり……ゼルートに金的を喰らわせられる事無く未遂に終わった。


「……やっぱり割の良い依頼は無くなってるな」


冒険者になってからある程度の期間が経ったゼルートはクエストボードに張られている依頼書に記載されている、報酬内容の良し悪しがそこそこ解ってきた。


「そりゃそうでしょう。もう昼前なんだから」


「だよなぁ~~~。どんな依頼を受けるか」


「珍しい依頼があるんだ。それを受けてみたらどうだ?」


先程まで話していた魔物を捕獲する依頼。

そのような依頼書がクエストボードにはいくつも張られている。


(普通の討伐依頼じゃ無くて捕獲系の依頼がいくつも……普通はあり得ないんだろうけど、この街ではそれが普通なんだろうな)


レース系のギャンブルならば魔物が死ぬことは殆ど無いが、闘技場で行われる試合に関しては闘技者や飛び入りで参加した騎士や冒険者と戦う魔物は当然死ぬ。


当然、魔物が冒険者や騎士を殺してしまうケースもあるが、そこら辺は飛び入りゲストが減らない様に運営側が上手く調整している。


「ルウナの言う通り、捕獲系の依頼を受けてみるのも悪く無いな」


「ゼルート……そう簡単に言うけれど、捕獲系の依頼って準備が面倒なのよ」


「それは分かってるって。でも、檻なら大丈夫じゃん」


そう言いながらゼルートは自分を指さす。

それだけでアレナはゼルートが何を言いたのか解かり、納得してしまった。


(そういえばゼルートは土魔法もそこそこ使えるんだったわね。それに動きを完全に封じるなら雷魔法を……それにウォーターボールで頭部を塞いで呼吸を止めてしまうなんて方法も持ってるし……うん、基本的に問題は無さそうね)


準備不足どころか準備万端だと気付いてしまったアレナ。


不安な気持ちが一気に晴れ、ゼルートがいれば大抵の魔物は捕獲出来ると確信した。


「……よくよく考えると、本当に反則よね。そのセンスは」


「広く多少深い感じにそっちの方の才能があったんだろ」


「本当に謙虚ねぇ~~……それで、捕獲系の依頼を受けるならこれなんで良いんじゃないかしら?」


「なになに……フォレストリザードの捕獲、か。俺は別に良いと思うけど」


ランクCに分類される魔物、フォレストリザード。

ワイバーンと同じくCランクに分類されるドラゴン系統の魔物。


ワイバーンと比べてリザード系には羽が無く、脚も速くは無い。

しかし尾の一撃は鋭く重い。爪や牙に体当たり、ブレスだって決して油断出来る技では無く、どれも一撃で人をゴミの様に蹴散らす。


「ルウナはどうだ?」


「私もまったく問題は無い。ただ、一つ疑問なのだが……この依頼は私とアレナが一緒に行く必要があるのか? 一緒に戦えば寧ろゼルートの邪魔をしてしまう様な気がするのだが」


「それは……まぁ……もしかしたらそうかもしれないな」


依頼書にはなるべく傷なしで捕獲と書かれてある。

アレナであれば多少はそういった事を器用に行うことが出来るかもしれないが、ルウナにはその自信が全くなかった。


格下相手に手加減が出来ないという訳では無いが、それでもルウナ個人としてはガッツリ戦いたいというのが本音だった。


「うし、それじゃこの依頼は俺とラームと……アレナで受ける。だからルウナはゲイルやラルと一緒に受ける依頼を適当に見繕ってくれ」


「了解した!!!」


ゼルートの言葉にルウナは勢い良く返事をし、討伐系の依頼書に目を移す。

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