少年期[467]過剰だが妥当
「次は僕だね」
アレナの雷を纏った蹴りにルウナの炎狼の拳をモロにくらってしまったスノウタイガーに対して攻撃はまだ止むことは無く、後方から拳に岩石を纏ったラームが思いっきりアッパーをかます。
そのアッパー自体は空を切ったのだが、拳に纏われていた岩石は途中ですっぽ抜け、スノウタイガー尻に向かって飛んだ。
この衝撃にスノウタイガーは先程までとは少し種類の異なる痛みを感じた。
「ッーーーーー!!!!????」
後方からの衝撃でスノウタイガーの体は頭が地面に、尻尾が上を向くような形になってしまった。
「今度は頭ですね」
少女の姿をしているラルの体からは想像できない程の蹴りを放つ。
特に属性魔力を纏っている訳では無く、身体強化しか使っていない。
にも拘わらず、その蹴りによってスノウタイガーの後頭部の骨は絶妙な威力の調整で砕かれてはいなかったが、波打つように罅が広がった。
「そろそろ終わりだ」
今度は逆に尻尾が地面で頭が上、その状態になった瞬間にゲイルの三連突きが縦に決まる。
本来なら体に激痛が駆け回る程の痛みなのだが、殆ど意識が飛んでいるスノウタイガーには体の痛む箇所が単に増えた。その程度の感覚しかない。
「じゃあーな」
そして最後の最後に背中からゼルートの回し蹴りをくらい、背骨が完全に折れたスノウタイガーはノックアウト。
「バイバーイ」
ラームのさっさと死なせてあげようという少しの慈悲により、頭を触手で貫かれてスノウタイガーの意識は途絶えた。
「・・・・・・流石にやり過ぎたかしら?」
「これぐらい妥当だろ。こいつが今まで食ってきた冒険者の数を考えればな」
「やはりそういうところがあるよなゼルートは」
自分と全く関係ない人物の考えての攻撃、アレナとルウナはその優しさに自然と頬が緩む。
それはゲイル達も同じであった。
「普通の事だろ。それに、俺達にはそれが出来る力があったんだし。討伐の安全性を考えてもさっきの攻め方は良かった。……こいつが成長してたら話は別だったけどな」
本来得ることは出来ない力を得た成長した魔物。
スノウタイガーレベルの魔物が成長したとなればそれこそ賞金が付けられてもおかしくない強さを持つ。
「それこそ、全力で叩いていたでしょ」
「そうだな。こいつが成長していたら、この辺りは季節関係無しに氷の世界になっていたかもしれない」
スノウタイガーが成長した結果、どのような力を得るのかゼルートには解らない。
しかし上位種であるブリザードタイガー並みの氷の能力を手に入れるのは確実。
「こいつの解体はギルドの場所を借りて行うか。んで、傷はもう大丈夫か?」
スノウタイガーの姿を隠蔽した状態からの攻撃によりほぼ全滅しかけていた冒険者達にゼルートは声を掛け、安否を確認する。
「は、はい。ゼルートさんから貰ったポーションのお陰で大丈夫です!!」
「ほ、本当に有難うございました!!!!」
パーティーのリーダーである男が綺麗に九十度に頭を下げ、それに続いて残りの三人も腰を九十度に曲げてゼルートに感謝の言葉を伝える。
それに対してゼルートを気にしなくて良いと返す。
「俺達がここに来たのはたまたまだ。ギルドに入ったらたまたま森に厄介な魔物がいるかもしれないって言われたからな。とりあえずその魔物の討伐も終わったんだし、とっとと戻ろうぜ」
助けた相手が後日死んでしまった、なんてことにはなってほしくないのでゼルートは四人と街まで一緒に戻り、解散した後はギルドに向かって直行。
そしてゼルートに声を掛けてきた冒険者は他の冒険者達と話し合っていた。
「さっきぶりだなおっちゃん」
「お、おおっ、え……もう帰って来たって事は、そういう事なのか?」
「ほら」
ゼルートはアイテムバッグの中から一つの牙を取り出す。
「これ、スノウタイガーの牙」
「なっ!? マジでか。そりゃ被害が大きくなる訳だ。とりあえず、報告が終わったらこっちにこいよ。一杯奢るからさ」
「まだ酒は飲めない。代わりに飯を頼むよ」
ゼルートとしては酒でも良いのだが、自身の健康を考えるとやはりまだ早いと決断。
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