少年期[443]十分に化け物

『中々強い魔物はいませんね。もし同族が現れたのなら多少良い勝負が出来そうなのですが、今回の討伐戦を考えればギルドからすればそういった状況は遠慮願いところでしょうか』


ドラゴン系の魔物が現れたのなら満足のいく戦いが出来たかもしれない。

しかしそんな状況は冒険者ギルドの上層部が望んでいない事ぐらいラルも解っている。


地上で戦っている冒険者達にとってラルはとても有難い存在だった。

上空への攻撃手段を持っている者は多く無い。

持っていたとしても、速度次第では簡単に避けられてしまう。


ラルは自身の周囲を飛んでいる魔物だけでは無く、少し離れたところでアレナ達以外の冒険者と戦っている魔物達も速度重視のブレスや翼に爪から放つ斬撃で仕留めている。


アレナ達も上をあまり気にしなくても良い状況に戦いやすさを感じている。


「数は多いけれど、対処出来ない強さでは無いのよね」


まずは機動力か視界を潰す。それから攻撃手段を潰し、最後は命を潰す。


グレイスの場合はそういった細かい事を考えず、対峙した魔物の命を最初から全力で刈り取ろうとしている。

一見隙のある戦い方に見えるかもしれないが、危険察知能力は非常に優れているので躱さなければならない攻撃は最小限の動きで躱している。


コーネリアは魔法職の者として目指す完成形の戦い方で魔物の数を減らしていく。

初・中級魔法でアレナと同じ視界、機動力を奪い、隙を突いてトドメを刺す。

自身の魔法を掻い潜って迫って来た魔物に関して杖に魔力を纏って突くか裂くかで絶命。


「おっ、オーガ―ウォーリア―じゃねぇか」


自分以上の体格を持つ相手が出て来た事でグレイスのテンションが上がり、コーネリアに手で指示を送ると直ぐに走り出す。


「仕方ないですねぇ。アレナさん、少し手伝って貰っても良いですか?」


「任せてください」


Cランクの中で上位の実力を持つオーガウォーリアー。

そして扱う武器は普通の大斧では無く、使い手の腕力と防御力を上昇させる効果が付与されている。

Cランクと言うよりは、Bランクに片足を突っ込んだ魔物。


しかしそんな魔物であってアレナはグレイスが相手にするなら一分も時間は掛からないだろうと判断し、コーネリアの援護に向かう。


(ゼルートも大概化け物だけど、このお二人も中々に実力は化け物よね)


アレナもゼルートから詠唱破棄や並列詠唱の方法などを学んだが、コーネリア程の技術は無い。

グレイスの力や魔力を込めるタイミング、脱力するタイミングなどもまだまだ及ばない。


(長い戦いの中で得た物よねぇーー。それをまだ十代前半で習得する私達のリーダーはもはや一種の境地に辿り着いていそうだし、仙人と言うべきかしら?)


まだまだ努力が足りないなと思いながらアレナは襲い来る魔物を殆ど一斬りでその命を散らす。


「流石元Aランク冒険者ね。とっても戦いやすい」


「現役のAランク冒険者に褒められて光栄です。ただ、今こうして思いっきり動けるのは頼れる仲間がいるからですよ」


「そうねぇ。上からの攻撃を気にしなくて良いのはとても楽ね」


上空から迫りくる魔物だけでなく、後方から放たれる遠距離攻撃する全てラルが蹴散らしているお陰で目の前の敵だけに集中する事が出来る。


「・・・・・・本当にあっという間に倒したわね」


グレイスとオーガウォーリア―の戦いは一分どころか三十秒と掛からずに終わった。


同じ魔道具の大斧。そう簡単に壊れはしないが強度を考えればグレイスが扱う大斧の方が丈夫であり、尚且つ風を纏っている事で攻撃力も違う。


相対してからグレイスはオーガウォーリアーの体ではなく大斧に集中攻撃し、武器破壊に成功した。

武器が無くとも素手ででも十分に戦えるオーガウォーリアーだが、それでも己の自慢の大斧が破壊されたところで動きが鈍ってしまう。


速さでもオーガウォーリアーを上回るグレイスがそれを見逃す訳が無く、切断されても数秒は視界が回転している事が解る程度に綺麗に斬られ、膝から地面に崩れ落ちた。

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