少年期[427]そう見えてるのか

「ゼルート、もしあなたを馬鹿にするような冒険者がいたらどうするの?」


「バカにしてくるだけなら放っておく。戦いに参加するなとか言ってくるようなら戦って解らせる。それが一番手っ取り早いだろ」


「ゼルートの言う通りだな。私も同じことをすると断言できる!!!」


ルウナは特に頭が回らないので、とりあえず挑発して摸擬戦に持ち込めれば最善だと考えている。


「はぁーーー・・・・・・本来なら頭を悩ます解決方法だけれど、時間が無い今はそれが一番の解決策ね」


「だろ。というか、後でゲイル達もいるって解ればなおさら参加するなと言えないだろ」


「でもゲイル達だけ戦いに参加してゼルートは参加するなって言いそうなお馬鹿さんがいるかもしれないじゃない」


「かもしれないな。ただ、そこまでの阿呆がいれば俺じゃなくてグレイスさんが対処してくれる筈だ」


グレイスは今回ドーウルスからやって来た冒険者達のまとめ役であり、そういった場面では自ら前に出て対処しなければならない。


そしてグレイス程長くAランク冒険者として活動している者なら発言力も高い。


(Aランク冒険者同士であっても、喧嘩を売りたいとは思わないだろ。もしこんな状況でそんな事をする奴なら正真正銘の阿呆だ)


流石にそこまで自己中な冒険者はいないだろうと思いながら冒険者ギルドの中へ入り、受付嬢に待ち合わせの場所へと案内される。


「おう、来たな。こっちに座れ」


先に来ていたグレイスに手招きをされてゼルート達はグレイスとコーネリアの傍に座る


机は円型に並べられており、今回の討伐に参加する者すべてが座っている訳では無く、後方で待機している者もいる。


「はっはっは、やっぱり注目されてるな」


「注目というか、何だこいつはって視線を向けられているだけだと思うんですけどね」


居心地の悪い視線がゼルートに突き刺さる。

ルウナとアレナに関しては欲に塗れた視線がへばり付く。


「こいつら・・・・・・本当に戦う気があるのか?」


「それは有る筈よ。この場にいるんだから。でも男の冒険者にとってそんな事は関係無いのよ」


同じような視線を何度も受けた事があるアレナは男はやっぱり阿呆だなと思いながら視線を受け流しながら、この中にどれほど本物と呼べる実力者がいるのか確認する。


(考え丸解りの視線を向けてくる馬鹿達も一般的な強さを持つ冒険者と比べたら十分に使える実力は持っているのね。その中でも、跳び抜けた実力を持っているのは・・・・・・五人ぐらいかしら?)


人族が三人に、獣人族が一人とエルフが一人。

おそらくパーティーの中でリーダーを務めているか、エースであろう人物。


その五人と同じパーティーに所属しているメンバーはゼルートの実力を見抜けなかったり、アレナとルウナに色欲が混ざった視線を向けている者もいるが、その五人は別だった。


(ゼルートを侮った目で見ていない時点である程度信用出来る。だからといってパーティーメンバーまで信用は出来ないけど)


冒険者達が一丸となって戦わなければならい状況で、私利私欲の為に同業者を乱戦の中で狙う真性の屑が世の中には一定数いる。


時間までの間、ゼルートとルウナもアレナと同様にこいつは信用出来るなという人物を探していた。


そして全員が時間内に集まり、ギルドマスターが司会を務めて作戦会議に入ろうとする。

が、やはりと言うべきかゼルートの実力を見た目で判断した冒険者がギルドマスターに発言の許可を得てからゼルートを指さして発現する。


「俺はそこに座っているガキが今回の討伐に相応しい実力を持っているとは思えない。保護者がいないと何も出来ないガキが何か出来る場所じゃないんだからな」


男の言葉に同意する多数の冒険者がそうだそうだと、声には出さないが何度も頷く。


しかしゼルートにはそんな連中の事など視界に入っておらず、グレイスとコーネリアと目を見合わせ、同時に噴き出して笑ってしまった。

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