少年期[423]趣味を極めた一種の技
「って訳なんだが、参加するよな」
「当然ですね」
「勿論です」
「たっくさん倒せば良いんだよね!! 任せてよ!!!」
従魔三体からの返事は非常に好戦的なもので、ゼルートとしては予想出来ていたがホッと一安心。
デリックから報告を受けた後、出発は次の日に即決定された。
ゼルートの持ち物的には直ぐにでも出発できるが、やはり一日キッチリと休んでから出発したいのが本音であった。
そして翌日の朝、ギルドマスターが選んだ四つのパーティーが集まっていた。
「おっす!! ゼルート、久しぶりだな。噂は聞いてるぜ。またまた楽しく暴れたみたいじゃねぇーーか!!!」
「どうも、グレイスさん。別に暴れてはいませんよ。姉からの依頼をキッチリ完了させただけですから」
ドーウルスまでどういった内容でその噂が流れて来たのか知らないゼルートはその内容が少し気になった。
(噂ってのは伝わる場所が遠ければ遠い程、どんどん大きくなったり内容が変わっていたりするからな。とりあえず俺が悪役の様な感じで戦ってたとかでなければ問題無いか)
仮にそんな噂になっていたとしても、ゼルートが一人で騒げばそれだけ逆に怪しまれるので逆効果でしかない。
「おう、お前がゼルートってガキか。短期間でDランクになって天狗になってるのかもしれねぇーーが、あんまり調子に乗ってんじゃ「あっ、そういうの結構なんでもう出発します」てめっ、人の話をさいご、まで・・・・・・聞け、よ」
ゼルートの実力をまだ信じ切れていないBランクの冒険者が突っかかろうとしたが、それを軽く流された事で頭に血が上るが、それは急激に下がった。
「そんじゃ、これに乗ってください。あっ、地面がしっかりと安定してなかったら結構揺れるんで座ったら欠が痛くなりますよ」
土の魔力によりつくられた簡易的なトラック。
その一連の流れだけで男は一先ずゼルートの魔力の腕は解った。
自身のパーティーメンバーで、魔法をメインに戦う女冒険者の方を向くと、私には絶対に出来ないと言わんばかりに手を横に振っていた。
「ほら、さっさと乗ってくださいよ。速くラスクに着かないといけないんですから」
「お、おおう。わ、わかった」
ゼルートに絡んで来た冒険者は先程までの勢いを完全に失っており、それを見た周囲の冒険者は小さく笑うか仕方ないよなって表情を浮かべる。
そして彼の仲間は自分がゼルートに絡みに行かなくて良かったと心の底から思った。
ドーウルスを出発してから十分程。ゼルートが操る簡易トラックは全くスピードが落ちる事無く進んでいる。
「話には聞いていたけど本当に凄いな!!」
「それはどうも。でも、別に難しい事はしてませんよ。単に四つの車輪を均一な速度で回してるだけですから」
幼い頃から魔力操作の訓練を行っていたゼルートにとっては全くもって苦にならない操作。
だが、それを聞いた魔法職の人達はふざけるなと怒鳴りたい気持ちを抑えた。
(ゼルート君は全く悪気が無く言ってるのだろうけど、普通はそう簡単なものじゃないのよね。おそらく趣味を極め過ぎて魔力操作が一種の武器になるぐらい努力したゼルート君だから出来る技術なんだけどねぇーーー・・・・・・多分、ゼルート君なら後ろから突き刺さる殺気に似る視線に気付いている筈よね?)
ある程度熟達した魔法職の者なら、ゼルートが生み出した簡易トラック動かす事は出来る。
しかしゼルートの様に長時間動かしながら他人と話すなど、運転に相当慣れていなければ即事故ってしまう。
(あーーー、鬱陶しいな。そんなに殺意に似た感情を込めた視線を飛ばすって事は出来ないんだよな。そもそもなんで魔力操作を極めようと思わないんだよ。無茶苦茶汎用性が高いのに)
遠・中・近距離攻撃全てを行えるゼルートにとって、魔力操作は基本中の基本だった。
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