少年期[420]古典的な手
「お待たせ」
ルーシュとの話し合いを終えたゼルートとラームは何事も無くアレナ達と合流する。
「ちょっと時間掛かったわね。何か面倒事でも起きたの?」
「いや、別にそんな事は無かったぞ。単にちょっと話してただけだ」
「そう。それで、どんな依頼内容を頼んだの? あなたの事だから、生きていたくなくなるような拷問をしてから殺すとかかしら」
家族や仲間に敵対する者に対しては一切容赦をしないゼルートなら、それぐらいの事をしても可笑しくは無いだろうとアレナは思っている。
その考えをゼルートは否定しなかった。
「まぁ、俺が直接手を下すならそういった行動を取るかもな。でも今回は見せしめも含めているからそういった事は頼んでいない」
「あらそうなの? ならどういった事を頼んだのか気になるわね」
「別にそこまで大層な事は頼んでいないよ。効き足と利き腕の切断。後耳は片方を切って貰って、後は男の二つの命を潰して貰うって感じだ」
「ゼルート様、それは男にとっては中々に悲しいメニューではないでしょうか。レイリア様を狙った男に同情はしませんが」
ゲイルに女を抱こうという意思はあまり無いが、知識として金玉が二つとも潰れたらとりあえず子孫は残せないという事だけは知っている。
ただ、それでもセーコ・ルギーズが屑野郎という事だけは理解しているので、寧ろもっとやってしまえとすら思っている。
「ところでゼルート、中にいる奴らは強かったのか?」
「ちょっと意外な場所でな。殆ど他の奴らとは会う事が無かったけど、ボスとその傍にいた数人はやっぱ俺らが相手をした奴らとは文字通りレベルが違ったな」
ルーシュとその傍にいて仕事を手伝っていた暗殺者の二人。
身長は女性にしては高いが、体格は普通な暗殺者。
そして如何にも文系ですといった見た目の男の暗殺者。
(三人とも何かに特化してそうな暗殺者だったな。ステータスを五角形で表すなら基本的に星形なんだけど一つだけ飛び抜けているって感じの)
もし戦うなら面倒な相手だと思うのが普通だが、ゼルートはそういった面倒な相手がどんな手を使うのかある程度考えて戦うので、面倒と思いながらもやらかすことは無い。
「とりあえず、五日後まで王都にいる期間が伸びたから」
「了解。それなら、ちょっとだけ王都のダンジョンでも探索していく?」
「・・・・・・興味はあるけど、やっぱり遠慮しておく」
これからダンジョンを探索しに行くと急行した場合でも、ゼルートは探索するのに全く問題無い程に多くの物を持っている。
しかし王都にいる時間はそう長くは無いので、仮に探索するならば完全に集中したい。
そう考えているゼルートにとって五日間という期間はあまりにも短い。
「さて、とりあえずもう怪しい影は無いんだよな」
「無いな。というか、流石に侯爵家の子息とはいえそこまで幾つもの組織の者を雇う程の大金は持っていないんじゃないか?」
「それも確かにそうだな」
こうして予定の無いゼルート達はそのまま日が暮れるまで王都をぶらりぶらりと楽しんで回った。
そして五日後、ルーシュの部下からゲイルとラームが手紙を受け取り、残りの報酬を渡す。
屋敷に帰って来た二人から手紙を受け取り、ゼルートは依頼完了の報告書を読む。
「はっはっは、流石に暗殺者を送っておいて自分が暗殺者に襲われると予想出来る程頭が回らなかったみたいだな」
セーコ・ルギーズの周囲に護衛らしき人物は一切おらず、学園の外に出たところで色仕掛けを行って人気の無い場所に移動させ、事を済ませた。
(おいおい、姉さんに惚れてたんじゃねぇーーのかよ。まっ、貴族の出である男なら大抵そんなもんか)
手紙を読み終えたゼルートは事実確認のため時間を調整してから屋敷を出て学園へと向かった。
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