少年期[419]良い性格をしてる
「そうかい。しっかりと殺して二度とこういった事が起きないように見せしめにしなくて良いの? そういった手段は貴族の中では良くある手だけど」
「確かにそうすればセーコ・ルギーズに関しては二度と手を出せなくなります、物理的にね。ただ、他の貴族連中まで欲を抑えきれるかと言えば案外そうでは無いと思ってるんですよ。貴族の子息や令嬢って、一旦暴走してしまったら結構駄目なとこまで堕ちてしまう筈です」
「ふふふ。まっ、間違ってはいないね。今回私達に依頼を頼んで来たセーコ・ルギーズは堕ちたと言っても良いわね」
裏の組織に依頼を頼む。その事行為をすれば落ちた事になる。
と、ゼルートは思っている訳では無い。
中には結果を善に持っていくために必要な依頼もある。
ただその中で私利私欲のため、関係のない人間まで不幸にするような依頼を頼めば、それは人として堕ちたも同然。
(俺の場合は多分ギリギリセーフ、の筈。だって向こうが喧嘩売って来たのを買ってやっただけだからな。正当防衛・・・・・・とは少し違うが、堕ちてはいない筈だ)
私情で戦うことがちょいちょいあるゼルートだが、売られた喧嘩を買う。もしくは自分の邪魔をしてきた相手をボコっただけなので問題は無いと本人は結論付けた。
「だから、俺はあいつにあっさり死ぬんじゃなく。最後の最後まで俺の姉に手を出そうとしたことを後悔しながら生きて欲しいと思ってるんですよ。あっ、ついでに男の命を二つとも潰しておいてもらっても良いですか?」
「それは別に構わないわ。でも、あなた本当に良い性格をしてるわね。関係あるかは解らないけど、今までたくさんの人を殺した事がある?」
「盗賊に絡まれた時は一人も逃がさず殺しましたね。あと・・・・・・まぁ、事情があって殺した人物もいますね」
「その事情が少し気になるけど、今話す事では無いね。それで、報酬に関しては幾ら払えるのかしら」
ルーシュは事前に部下からゼルートが報酬として出せる金額を聞いていており、それ程の財力を持つ理由も想像が付いていた。
しかし本当にそれだけの金額を有しているのか、それがゼルートの見た目から少々信用出来なかった。
(盗賊団を何度も殺してるようだからそこそこ持ってるんでしょうけど、それでも白金貨数枚をなんともない表情で払えると言える程の財力・・・・・・あの決闘でどれ程の金額を得たのか本当に気になるわね)
ルーシュの情報もを使えばある程度は調べられるが、そんな事に大事な情報線をわざわざ使う訳にはいかないので我慢する。
「ほい、白金貨三枚で」
「・・・・・・本当に持ってるのね。こんな大金を払って冬とか大丈夫なの? 辺境に居れば冬は大体雪が降ってモンスターの討伐どころじゃなくなる場合もあるのよ」
「随分と心配してくれるんですね。大丈夫ですよ、これでも結構持ってるんで」
「そうかい。なら前払いとして一枚だけ貰っておくよ。依頼の実行は何時が良いってあるかい?」
「王都に長居するつもりは無いからなるべく早い方が良いですね」
「分かった。一週以内に・・・・・・いや、四日以内には終わらせるよ。依頼が完了したらあなたが泊まっている宿に手紙を送るよ」
「あっ、それは止めた方が良いかも」
ルーシュ達は今ゼルート達がどこで寝泊まりをしているのかまでは把握しておらず、とりあえず手紙で結果報告をすればいいと思っていた。
ただ、ゼルートとしてはその手紙が通るルートが好ましくない。
「何か問題があるのか。それならどうやって完了報告をしたらいい?」
「えっと・・・・・・なら、五日後の正午にこのラームとゲイルっていうリザードマンの従魔が一緒に居るんでそいつらに渡してください」
「そのリザードマンもそっちのスライム君みたいに人の姿になってるって認識で良いかしら?」
「はい、見た目は高身長でちょっと渋めのイケメンです」
「了解したわ。それじゃ、五日後を楽しみに待っていて頂戴。依頼が本当に完了したのかどうか知りたければ、お姉さんにその辺りは訊きなさい」
こうしてゼルートとルーシュの会話は終わり、特に争い事が起こる事無く終了した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます