少年期[406]得物の以外は使わない
(体を動かす速度を上昇させる。それだけがあの短剣に付与されている効果なのか? 別にそこまでCランク冒険者の武器事情を知っている訳じゃ無いが、それ以外にも効果はあると思うんだけどなぁ・・・・・・)
何時まで出し惜しみをするのだろうとゼルートが思っていると、フーラの速度が一段階上がってディリアの連撃から抜けた。
「やっぱりまだ何かを隠していたよな。それで隠していた効果は刃に風を纏い、更に足の裏から風の魔力を噴射させたってことか?」
「ゼルートも似たようなことをしていたな。あれと同じ内容だな」
「みたいだな。それに俺はただ単に魔力を勢いよく噴出しただけで、フーラは風の魔力を使ったんだ。加速は俺の時より上だろう」
「でも、ゼルートだって同じこと出来るんでしょ」
「当たり前だろ。元々風魔法を扱えるんだから、属性の無い魔力をでやったことと同じ内容ぐらい出来る」
アレナの言葉にゼルートは即答で答えるが、その回答が通常では無いのだと二人は心の中でツッコんだ。
ゼルート程幼い頃から魔力の訓練から遊びと言える程に操る事に長けなければ、属性を変化させて同じことを容易に出来はしない。
「ただ、なんとなくだがあれではそう時間が経たずに魔力が尽きてしまうんじゃないか?」
「お互いに魔力を持続的に消費しているが、消費量が多いのはフーラの方なのは確かだ」
「でもだからといて負けるって訳では無さそうだよ」
アレナが興味深くフーラが持つ短剣を見ている。
ゼルートやルウナより長く冒険者の世界に身を置いているアレナにとって、フーラの短剣はどこか記憶に引っかかるマジックアイテムだった。
(でも、それはディリアって冒険者が持つ二つの手斧もそうなのよねぇ・・・・・・本当の勝負はここからってやつかしら)
フーラが二本の短剣の柄を合わせる、短剣は姿を変えて両端に刃が存在する槍と変化した。
それを見たディリアは自身が負けるイメージが頭に浮かび、フーラと同じく二つの手斧の柄を合わせて一本の大斧へと姿を変える。勿論その大斧は両端に刃が存在している。
二人が本気の本気を出した事で周囲の野次馬のテンションはヒートアップ。
男女、冒険者にギルドの職員関係無く盛り上がる。
「ようやくお互いに自分の持ってる全力出すってところか。まぁ、本当に全てって感じじゃないけどな」
「未だに両者がまだ手を隠しているという事なのか?」
「そういった解釈でも合っていると思うが、今武器以外に身に付けている常時発動するマジックアイテム以外の物に関しては使っていないんじゃないかと思うんだよ」
「その可能性はあり得そうね。お互いに持っている武器に関しては両者や周囲のヤジ達は何も言わなさそうだけど、それ以外の道具を使えば色々と口を出す馬鹿が出てくる」
冒険者同士の決闘に当事者以外の者がヤジに紛れて攻撃したり仲間をサポートするなどはアウトな行為であり、そんな事をしてバレれば袋叩きにされてしまう。
「あと、二人共今回は自身のクランリーダーの方が強いって事を証明するために戦っているんだろ。なら余計に小細工じゃ無いけど、武器以外のマジックアイテムは使わないだろ」
「なるほど。その気持ちは解る。武器やアクセサリータイプの魔道具に頼るのが悪いとは思わないが、それでも己の五体と得物一つで倒せた方が気分は良いからな」
少し違うのだが、敢えてツッコまずゼルートは最後の激突を一瞬も見逃さないように目を向ける。
(おそらく武器の重量は互いにそこまでは変わらない筈。後は個人が持つスキルや技量の高さで勝負が動くってところだな)
二人にはヤジが騒ぐ声など全く気にならない程に集中しており、その場から動き出したのはほぼ同じタイミングだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます