少年期[378]風呂での過去話

王都での予定を決めながら屋敷へと戻ったゼルート達は執事長のワッシュから風呂の用意が出来ていると聞き、のんびりと体を休める事にした。


ゼルートは初めに使用人達が風呂に入る時間を決めなかったので、男湯には二人の執事が入っていた。


「「ゼルート様、おかえりなさいませ」」


「ああ、ただいま。つか、ここはのんびりする所なんだから堅くならずゆっくりしてくれ」


「「わ、わかりました」」


ゼルートとしてはフルちん状態で股間を見せられる方が嫌だったので、直ぐに楽な状態になって欲しかった。


(男湯に入ってるんだからち〇こを見えてしまうのは当たり前だが、積極的に見たい訳では無い。というか、それなら女風呂に入った方が色々と得だ・・・・・・まっ、そんな事する訳ないんだけどな)


思春期の男としては一度は風呂まで裸の美女たちに囲まれてみたいという思いはあるが、それはそっと胸の内にしまった。


「ゼルート様、こちらのシャンプーというのはゼルート様がお造りになられたと聞いたのですが」


「そうだぞ。一般人でも覚える事が出来る生活魔法の中にクリーンがあるから体や髪は何時でも綺麗に出来るけど、俺は髪がゴワゴワする感じが嫌だったからな。運良く良い眼を持っていたから色々と調べて造ったんだよ。それをまだ実家を出る前に街に来ていた商人に毎月実家へ売上金の一部を送るって事で権利を渡したんだよ」


「そうだったんですか。それではご実家の財政もかなり潤っているのではないでしょうか?」


シャンプーの造り方を商人に教えたのは王都での決闘を終えた後だった為、既にゲインルート家の懐はかなり暖まっていた。


「それなりに溜まってるだろうな。多分、男爵家には似合わないぐらいあるだろう。けど父さんの事だから街の住人の為に使ってそうだな」


勿論家や使用人達の生活水準を少しは上げるかもしれないが、それでも父親はあまり自分の為に使おうとはしないだろうと、何となくだがそう思えた。


「そういえばゼルート様。王都のダンジョンには潜られるのですか?」


「王都のダンジョンか・・・・・・今回は潜らない」


興味が無い訳では無く、寧ろ興味がありまくるゼルートだが姉にとってかなり一大事なので、直ぐに戻ってこれないダンジョンに行く訳にはいかない。

それと、姉の一件が終わった後にダンジョンへ潜ろうとしても、赤竜の宴のクランともしかしたら決闘する冒険者がクラン所属の者かもしれないので、ダンジョン探索をするにしても少し期間を空けてから行いたいところ。


「そういえばゼルート様は貴族に対して容赦ないと聞きましたが、それは本当なのですか?」


「いや、別に全ての貴族に対してって訳じゃない。特定の貴族・・・・・・いや、貴族だけじゃないな。俺に対して自分勝手な理由、悪意を持って絡んできた相手には容赦しないってところか」


「そ、それではゼルート様が五歳の時の噂は・・・・・・」


「本当だぞ」


上から聞いていた報告を本人から聞いた使用人二人を驚きつつも、ゼルートの堂々とした表情に感心して無意識に拍手していた。


「まぁ、あそこだけ切り取って内容を聞けば容赦なくボコボコにしているように聞こえるだろうな。元々あの時のパーティーの時に他の貴族の子息や息女と関わるつもりは基本的に無かったんだ。だが気が合う奴がいて結果目指す道が同じ奴と知り合えた。それに冒険者を始めてからも貴族と関わる事はあった」


そこまで数は多くなかいが、冒険者になったばかりのルーキーが出会うにはあり得ない面子だと言えるだろう。


「その中でも・・・・・・一人だけいたか。悪い意味で貴族らしい下らないプライドが肥大化した馬鹿が」


容赦ない罵倒をサラサラというゼルートに、使用人二人は目の前の子供が冒険者でありながら屋敷を持つ年齢に合わない力を持っているのは知っているが、それでも貴族に聞かれれば不敬罪だ!!! と言われて罪を着せられるかもしれないという危機感は無いのかと思った。


が、爵位が上の貴族の子供に対して容赦なくボコボコにする者だと思い出し、そういった感情は既に無いんだなと理解した。

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