少年期[377]態度を見ていれば

「赤竜の宴からの勧誘を断るなんて、流石ゼルートね」


「別に流石って程のもんじゃないだろ。単純に自分の考えを曲げなかっただけだ。というか、その赤竜の宴ってクランはそんなに有名なのか?」


「王都でも五本の指に入る・・・・・・かは分らないけど、上から数えて十番以内には実力があるギルドじゃないかしら」


上から十番以内。それが凄いのかどうかいまひとつゼルートとルウナには解らなかった。


(王都は確かに人が多いから冒険者の数も自然の多くなるけど、この国中で一番多く冒険者がいる街って訳でもないんだろ。だったら十番居ないじゃちょっと凄いのかどうか判断できないな)


赤竜の宴はクランの総人数も多く、専属の鍛冶師を雇っていたりとかなり規模を持つのは事実。


「なるほど。それで、悪い噂はあるのか?」


「私が覚えてる限りだと特に悪い噂は無かった筈よ。まぁ、規模が大きいクランに属しているだけでただの末端冒険者が大きな権力を得たり実力が上がっていると勘違いする奴はそこそこな数でいると思うけど」


アレナがBランクの冒険者だった頃、王都程では無いがそこそこ栄えている街のクランの末端冒険者に絡まれ、結果ボコボコにした事がある。

そのクランの上層部は真面な冒険者だった為、後日アレナに絡んだ末端冒険者と上層部が金を持って頭を下げに来たという過去があったため、トップの者達が真面であっても末端が調子に乗っているというのは身に染みて解っている。


「どこにでもそういう奴がいるもんだな。というか・・・・・・俺が戦う相手がもしかしてあのクランから選ばれる可能性はあると思うか?」


「それは分らないわね。赤竜の宴が上から十番以内の実力を持つとは言っても、そのクランに属しているDランク冒険者が王都内で一番強いDランクの冒険者という可能性は寧ろ低いと思うわ」


「もしこれでゼルートが対戦する相手があのデーバックとかいう冒険者の後ろのいた腰巾着共だったら私は大笑いする自信がある」


「俺も笑う自信はある」


ルウナはデーバックの後ろにいた勧誘を断るゼルートに対して睨み付けるような視線を送っていたのを思い出し、小さく笑ってしまう。


(アレナの言う通り、大手のクランに属しているからという理由で自身も強くなっていると勘違いしている奴らがいる様だな。デーバックという奴はゼルートの強さに半信半疑だがある程度気づいてはいた。残りの三人の内背が異様に高い奴以外の二人は全く気付いていなかった)


その中でゼルートに睨み付けるような視線を送っていた女が、ただゼルートが勧誘を断った事に対して不機嫌になっていた訳では無いのは解っていた。


(尊敬しているのか惚れているのかは知らんが、そういった思いを抱いている男の誘いを殆ど瞬で断ったゼルートにイライラしていたんだろうな。じっくりと相手を観察すればゼルートの噂が四分の一ぐらいは正しいと思えたかもしれないのに)


例え見ただけでゼルートのある程度の実力が分らなくても、ゼルートが最近造った実績が本物かどうかがデーバックと話す態度から解ったかもしれない。


といった可能性もフーラが決して修羅場を潜り抜けた事がある冒険者なので、無い訳ではない可能性だった。


「まっ、とりあえず街中を歩いている時に周囲を気にする必要は無いんだな」


「そうかもね。でも、王都に滞在している間に恨みを買う可能性は十分にあるんじゃない?」


「不吉な事を言うな、不吉な事を。・・・・・・まっ、まだ清算しきって無い買った恨みはあるけどな」


主に二つ、ゼルートの中で万が一突然の襲撃を喰らう貴族からの恨みがあった。


(いや、片方は元貴族だから何かしようにも何も出来ないか。もう片方に関しては・・・・・・丁度良い切り札があるかも)

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