少年期[375]速いがマナーは守る
「ふぅーーーーー、美味かった。マジで美味かった」
「ゼルートの言う通りだったな。手が全く止まらなかった」
ゼルート達は運ばれてきた料理を十分と五分と掛からず食べ終えた。
「二人共少し食べるのが速過ぎない?」
「そうか? 別に普通だと思うけどな。それにアレナだってそう変わらないだろ」
「私は二人よりも食べた量が少なかったからよ。というか、ゼルートって結構上手に食べられるのね」
ゼルートが料理を食べる速さは少し異常だったが、それでも食べ方が汚いという事は無かった。
だが、それはゼルートの経歴を考えると当たり前の事なのだが、それをついついアレナは忘れてしまう。
「アレナ・・・・・・俺は一応貴族の子息だぞ。それぐらいは出来るぞ」
実家で暮らしていた時は朝食昼食夕食時は全て今回と同じように綺麗にゼルートは料理を食べていた。
だが森に入って昼を過ごす事が多いゼルートは採った木の実や食べられるモンスターの肉を焼いた物などはガツガツと、マナーとは何だ? といった感じで食べていた。
「そうだったね。ついさっきまでゼルートの過去の話をしていたのに忘れてた。何と言うか・・・・・・やっぱりゼルートは冒険者らしいのよ。根っから」
「一応褒め言葉として受け取っておく。というか、そもそも父さんと母さんも貴族じゃなかったんだからな。冒険者らしいのは普通だ。まぁ・・・・・・クライレット兄さんに関してはちょっと雰囲気的に貴族のイメージが強いけどな」
母親が不倫したとは思えない。
だが、それでも自身とは見た目が結構違う事にゼルートは疑問に感じなくもなかった。
(けど、父さんの渋めな感じの顔に母さんの優しそうな表情を足せばあんな感じになるのか。それじゃーー、俺は父さんの気前の良いところちょっとの渋さ? と母さんの元気さが混ざった感じか?)
父親と母親のどの部分が合わさっているのか中々イメージできなかったが、過去の出来事を思い出したゼルートはクライレットとレイリアが自分と完全に血が繋がっていると確信する。
(三人と家族を馬鹿にされて貴族のボンボンと決闘。そして相手をボコボコにした。そこを考えれば俺とクライレット兄さんの血が繋がっているかなんて疑うまでもないか)
「いきなりニヤニヤしだしてどうしたんだ?」
「ちょっと昔の出来事を思い出しただけだ。それで一応料理は食い終わった訳だけど二人共まだ腹に入るか?」
「デザートなら別腹でいけるわね」
「私もまだはいるぞ」
「決まりだな」
食後のデザートを頼もうと思い、ゼルートがメニューへ手を掛けようとした時、一人の男がゼルートに声を掛ける。
「ちょっといいかな?」
「・・・・・・よくないけどまぁーーいいや。っで、あんたは誰だ?」
「赤竜の宴というクランのメンバー、デーバックという者だ。後ろは僕のパーティーメンバー達だ」
冒険者にしては優男なデーバックの言葉を聞いた周囲の客がザワザワと騒ぎ出す。
アレナもクランの名前に聞き覚えがあったため少し身構えるような表情になってしまう。
そんな中でゼルートとアレナは赤竜の宴というクラン名を聞いた事が無いため、周囲が何故騒いでいるのか明確な理由は解らなかった。
「今日は君に話があって声を掛けさせて貰った。一応だが確認させて貰いたい。名前はゼルートで合っているかな?」
「ああ、合ってるぞ。それで赤竜の宴ってクランのメンバーさんが俺に何の用だ?」
「簡単に言えばスカウトだね。君とその仲間達に赤竜の宴に入ってく欲しいんだ」
男の発言にまた周囲が騒ぎ出すが、それと比例するかのようにゼルートの不機嫌オーラが体から溢れ出し始める。
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