少年期[370]過去話が伝わり

「すいません、中に入っても良いですか」


「もしかしてたが君の名前はゼルートで合っているかな」


「はい。本名はゼルート・ゲインルートです」


貴族街を前にして念のため警備兵に挨拶をしたゼルートは質問に対してフルネームを名乗った。

すると警備への一人、どころか周囲の警備兵の表情が一気に厳しいものに変わった。


「どうぞ、お通りください!!!」


「は、はい。分りました」


貴族街にただ入る。それだけなのにも関わらず視界で確認出来る全警備兵から敬礼を受けたゼルートは流石に驚いた。

アレナ達も驚くという選択肢以外は無く、体をビクッと震わせるが勘が良いアレナは何故このような態度のなのか何となく理解出来ていた。


「いきなり敬礼されて普通にビクった」


「ゼルートに失礼な態度を取ったら首を飛ばされると思ったんじゃない。物理的にね」


「流石にそんな物騒な事しないっつーーーの。玉を潰してから上司を呼ぶんだよ」


「・・・・・・十分に物騒よ」


相手が間違っている場合、怒鳴りつける。

それでもそいつから謝罪やしっかりとした対応が無い場合上へと対応する人間を変える。


前世の父親がよくマナーがなっていない従業員相手等にやっていた手をゼルートはふと思い出した。


(今は転生して来世にいる訳だから前世の父親の遺伝とかは関係無いと思っていたけど、案外そうでもないのかもな)


前世の父親と性格が似ている、それはとても不思議な感覚・・・・・・とは思えなくもないゼルートだった。


「まぁ、今はどうで良いな。にしてもマジで他の場所と比べて豪華さが違うな」


「私は依頼関係で何度か貴族街に入った事があるけど、やっぱり王都の貴族街は別格ね」


「私は・・・・・・こういった光景にどこか見覚えが無くもない」


屋敷の造りなどは違っても、元王女であったルウナの頭の中には薄っすらと故郷の街並みの景色が残っていた。


「ただやはり豪華過ぎて目がチカチカするな」


「それに関しては同感だ。まぁ、五分ほどで家に着くから少し我慢してくれ」


歩いて五分ぐらいならそこまで遠い距離では無い。そう考えながら歩いているゼルート達だが現在二人の子供に捕まって足止めをくらっている。

とは言ってもゼルート達の顔に不機嫌な表情は浮かんでいない。


「お兄さんたちは冒険者なんですか!!!」


「ああ、俺達は冒険者だ。今日は依頼で王都に来ているんだ」


「そ、それなら普段は別の街にいるんですか?」


「ああ。普段はもっと遠い辺境の街で魔物を倒したる冒険者ギルドの依頼を受けて生活してるんだ」


冒険者に憧れを持つ貴族の少年にゼルートは嫌な顔をせず話を続ける。

少年の隣にいる姉と思われる少女は何度もアレナとルウナに頭を下げていた。


自身の記憶にある屑の様な貴族の子供では無く、純粋な目でこちらを見て質問してくる少年にゼルートは感動している。

しかし貴族の子供が護衛も付けずに貴族街を歩いている事に対して疑問に思うゼルート。


(確かに貴族街なら誘拐される確率は少ないかもしれないけど、決してゼロって訳じゃないだろ? なのに子供二人だけで貴族街を歩くって事は・・・・・・)


もしかしてと思ったゼルートは気配感知のスキルを使い、直ぐにその理由が解った。


(明らかに子供二人から見えない位置にそこそこの実力者が多数いる。この子達の実家の人間達なのかそれとも雇われた人達なのかは知らんが、やっぱりまだ十歳にも満たない子供達を自由に歩かせるわけないよな)


子供達にもしもの事は無いだろうと解ったゼルートは子供達との会話を適当に切り上げて再度目的の地の屋敷へと向かう。

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