少年期[369]それでも安い

「そんじゃちょっとだけ待っていてくれ」


ゲイル達にギルドの前で待機してる様に頼み、ゼルート達はギルドの中へ入る。

中には昼過ぎだというのにある程度の数の冒険者がおり、冒険者達がゼルート達を見つけると直ぐに顔を逸らす事無く周囲の同業者とこそこそと話し合う。


「やっぱり目立つは目立つんだな」


「男が一人と女が二人ってパーティーが無い訳ではないのよ。でも私達の年齢差を考えるとそうそう見つからない組み合わせね」


「そういうもんか。普通に考えれば実力差が追わない年齢差だからな」


周囲の冒険者達はゼルート達に好奇の視線や嫉妬の視線を向けはするが、絡みに行こうとする冒険者いない。

それをこれ幸いと思ったゼルートは用事を済ませる為に早足で受付嬢の元へ向かう。


「こんにちは、本日はどのような御用でしょうか」


見た目に十後半の受付嬢がゼルートに侮るような視線を向ける事無く、一人の冒険者として対応する。

ゼルートとしては少し意外に感じる対応だった。


(見た目は完全に子供だからもう少し下に見るような態度は取らずとも、俺の年齢相応の態度をとるかと思っていたけど・・・・・・そこら辺も王都だからかしっかりとしてるんだな)


受付嬢の対応に感心しながらゼルートは自身のギルドカードを出す。


「Dランク冒険者のゼルートなんですけど、レイリアって方から家について話が来ていると思うんですけど」


「ッ!!! かしこまりました。申し訳ございませんが後ろのお二人のギルドカードも確認してよろしいでしょうか?」


「分りました。アレナ、ルウナ」


二人からギルドカードを受け取り、それを受付嬢へ渡す。

名前とランクを確認し終えた受付嬢は直ぐにゼルートのギルドカードも含めて返す。


「少々お待ちくださいませ」


そう言うと受付嬢はダッシュで奥へと向かった。


(あんなに走って転んだりしないのか?)


少し心配しながら受付嬢を目で追うゼルートだが、受付嬢の動きを見てそれは無いなと解った。


(奥にも結構働いてる人がいるけど他の同僚にぶつからない様に走れてる・・・・・・もしかし元冒険者が受付嬢をしてるってパターンなのか?)


長年受付嬢をやっており二十代の機敏さゆえに出来る動きなのか。

それとも元冒険者としての身体能力と経験で出せる動きなのか、どちらかは分らないゼルートだった。


「お待たせしました」


ダッシュで走ったのにも関わらず息一つ切れていない受付嬢からゼルートは一枚の手紙を貰う。


「こちらがギルドからゼルートさんの屋敷までの道順となります」


屋敷。その単語が聞こえた冒険者や受付嬢達の耳がピクリと動き、完全にゼルート達の会話に意識が向く。


「そして屋敷は貴族街にございますのでこちらのバッジをお付けください」


渡されたバッジを見ながらゼルートはこれがどういう物なのか直ぐに理解した。


「これが無いと貴族街に入れないって事ですか?」


「その通りです。ギルドの依頼や指名依頼等ので冒険者の方々が貴族街に向かう場合もこのバッジを付けてもらっています」


「そうなんですか。無くさない様に気を付けます」


「そうしていただけると助かります。無くされた場合は罰金として金貨三十枚を頂いております」


罰金として金貨三十枚。その値段を聞いてゼルートとルウナは少し高くないかと思ったが、理由を知っているアレナは金貨三十枚でも少し安いのではと思っている。


貴族街へ入れるバッジをン無くせばそれを探すのに多くの人間を動かし、情報を調べる必要が出てくる。

特定の貴族の暗殺等を考えている者がそのバッジを見つければ事件が起きるのは確実であり、裏のルートで捌かれればそれもそれで大事になってしまう。


「分りました。有難うございます」


三人はバッジを直ぐに身に付けてギルドをで受付嬢から受け取った手紙を見ながら貴族街へと向かった。

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