少年期[364]過保護のオーバーキル

休憩から一時間後、ゼルート達は体が大きい獣系の魔物と遭遇していた。


「・・・・・・懐かしいな」


その遭遇した魔物はゼルートがDランクへの昇格試験の道中に遭遇したスケイルグリズリー。

スケイルグリズリーが視界に入ったゼルートは即座に鑑定眼を使う。


(・・・・・・特に例外的なスキルは持っていないな。てことは成長した魔物って訳じゃないか)


前回遭遇したスケイルグリズリーは成長した影響で土魔法を使っていたので、今回ももしかしたらと思ったゼルートは鑑定眼を使って調べたが、特異的なスキルを持っていないと分り必然的に成長していないと分った。


そしてスケイルグリズリーがゼルート達の存在を確認する。

食料、もしくは排除すべき敵だと認識したスケイルグリズリーはゼルート達の方へ一歩ずつ歩を進める。


(大型系の魔物は俺達護衛が相手をしていたけど・・・・・・どうしようか)


体が大きい+ランクもDと身体能力が普通に高く、スケイルグリズリー特有の体質で皮膚が堅い。


「最初ぐらいは相手をさせても良いんじゃないか? 危なくなったら俺達が直ぐに助けに入れば良いんだしよ」


「・・・・・・そうですね。一回も相手をさせないのはこいつらの為にもなりませんし。そういう事で良いですかフーリアさん?」


「ええ、構わないわ。あなた達、危なくなったら私達が直ぐに助けに入るけど、だからって無理に攻めては駄目よ。回避を一番に優先しなさい」


「「「「はい!!!!」」」」


フーリアから早口に説明された内容をしっかりと頭に留め、こちらに向かって来るスケイルグリズリーに立ち向かう。

そんな勇気を振り絞って立ち向かう生徒に万が一が無いようにフーリアは弓を構え、ゼルートは両腕風の槍を準備。グレイスはそこら辺の木の太めの枝を引き千切って魔力を纏わせる。

ミルシェは詠唱を開始して何時でも魔法を放てるように準備をし、ヒルナは両手に刃に魔力を纏わせた短剣を持つ。

そしてラームは体が五つ程触手を生み出し、いつでも殺傷能力の高いウォーターボールを放てるようにする。


「・・・・・・グレイスさん、中々ワイルドですね」


「? ようわからんがこれが一番手っ取り早いだろ。魔力を纏わせればどんな物でもある程度強度を上げれるからな。流石に綿とかはそもそも投げても飛ばんが」


(いやいやいや、フーリアさんとヒルナが少し引いてますよ)


ゼルートも若干引いているが、それでも悪くない方法だとは思った。


(何と言うか・・・・・・刺さる部分の断面が無造作に引き千切っているから荒いんだよな。その分突き刺さる部分が痛そう・・・・・・実際に喰らった事が無いから分らないけど)


その痛みがゼルートにはどんなものなのかは分らない。しかしそれでもやってみる価値はあるだろうと思い、何時か鉱石を使って自作したくなっていた。


「・・・・・・・・・・・・そろそろ限界そうね。下がりなさい!!!」


フーリアの合図と共に生徒達はゼルート達の攻撃の邪魔にならない様に一斉に散る。

そして槍と魔力を纏った木に短剣と風槍に水槍と水弾がスケイルグリズリーに襲い掛かった。


ゼルート達の攻撃を全て喰らったスケイルグリズリーの自慢の皮膚も流石に耐えきれず、明らかなオーバーキルだと解る状態になった。


(全員の攻撃部分が点だからそこまで素材が駄目になったりとかしてないけど・・・・・・マジで風穴だらけだな)


「はっはっは!! 流石にやり過ぎたな!!!」


「そ、そうみたいですね。取りあえず爪や牙だけは持って帰りますか?」


「そうだな。スケイルグリズリーの牙や素材ならそこそこの値段で買い取ってもらえるだろう。本当は皮が一番売れるんだが・・・・・・解体の時間とかを考えると今回は止めといた方が良いだろう」


そしてギルドで牙や爪を買い取って貰った分のお金は生徒達に頑張った褒美として渡されることになった。

ちょっとした多めの小遣いが手に入った生徒達は小躍りしそうな程表情が緩んだ状態となる。

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