少年期[356]見本になるような
「ちっ! 手数が多いな、おい!!」
無数に迫り来る風の刃に対してゼルートも無数の斬撃で返す。
グリーンマンティスは風の刃に対して切断力のみを重視しているため、ゼルートの斬撃で余裕に相殺する事が出来る。
しかしその分魔力の消費量が少ないため中々攻撃がやまない。
(俺に当たっても正直そこまで大したダメージにはならないけど、生徒達やミルシェさん達にとっては無視して良い攻撃じゃないしな)
『僕も手伝った方が良いかな?』
『・・・・・・いや、ラームは左右と後方の警戒を続けていてくれ』
ラームの一手を借りれば戦いがスムーズに進むのは確かだが、それでもゼルートは目の前のグリーンマンティスの攻撃を自分で対処したかった。
『分った!! 無理しないでね!!』
『おう、任せてくれ!!』
(って勢い良く返事したのは良いがどうしようか・・・・・・とりあえず風の斬撃の多さに惑わされる必要は無い)
これから行う事は全てゼルートが一人で行う事。
それでもその一連の動きを後ろにいる生徒達も出来るようなものにしたい。
(とりあえず風の斬撃の速度や手数がこれ以上上がる様子は無い。詠唱ありでやるか)
作戦が決まったゼルートは早速並行詠唱を始める。
「風や、全てを斬り裂き突き抜ける疾風よ、その鋭利さを守護の力に変え、我前の猛襲を弾き飛ばせ・・・・・・ウィンドシールド」
ゼルートの目の前に現れた風の盾が風の刃を弾き飛ばす・・・・・・とまではいかないが後方に向かわない様に全て弾いている。
「うそ! あれって並行詠唱じゃ・・・・・・」
「でもゼルートさん、剣術や体術より魔法の方が得意って言ってたから並行詠唱が出来ても可笑しくないんじゃないか?」
「た、確かにそうかも・・・・・・でも並行詠唱が出来るDランクの冒険者なんているの?」
「俺達まだ冒険者になってすらいないんだから、俺達が知らないだけでそういう事が出来るDランクの冒険者もちょいちょいいるんじゃないか?」
Dランクの冒険者でも並行詠唱が出来る冒険者がいない訳では無いが、それでも珍しく優秀な事に変わりない。
ミルシェも自身が得意な属性魔法の内、一つだけならば並行詠唱を行う事が出来る。
「あらよっと!!!」
ウィンドシールドを発動した後、ゼルートは両側から攻撃範囲が広い斬撃を放つ。
勿論その斬撃はグリーンマンティスに当たらない。しかしその代わり逃げ道を数秒だがしっかりと塞いだ。
その隙にゼルートは身体強化のスキルを使って速度を上げ、グリーンマンティスの後ろに回り込む。
ここで首を斬り落とせばそれで終わりだ。
そう思っていたゼルートだが考えが外れてしまう。
「ッ――――!!!!」
グリーンマンティスが少しだけ首を後ろに向け、目は完全にこちらを見ていた。
何かヤバい、単純にそう感じたゼルートは慌てて後ろへ下がる。
(俺の速度に意識と目は追い付いていたのか? それとも俺が後ろを取るって予測出来ていたのか? どちらにしろやっぱそこら辺の雑魚とは違うな)
敵に称賛を送っているとゼルートに衝撃波の波が迫る。
「後ろの羽による振動か!!??」
(ポ〇ケ〇ンの技にむしのさざめき? って技があったな。そんな感じの技か)
攻撃の正体を瞬時に見切ったゼルートは二刀の長剣を宙に放り、両拳で何度も空気を殴りつけて衝撃波も衝撃波で相殺する。
グリーンマンティスの目はこちらを向ているが風の斬撃を放てる鎌はミルシェ達の方を向いている。
自分が速く戻らないとミルシェ達に被害が・・・・・・そう考えているとグリーンマンティスは方向転換してゼルートに襲い掛かる。
(なんでだ? 今なら俺がいないからミルシェ達に風の刃を向ける絶好のチャンス。まぁラームがいるから心配はいらないんだが・・・・・・あぁ、そういう事か)
事情が分かったゼルートは直ぐにラームとの念話を繋ぐ。
『ラーム、そっちの魔物は任せるぞ』
『了解!!! ちゃちゃっとやっつけちゃうよ!!』
別の魔物がやって来たため、自身の得物が減る形になるが後ろから追撃される可能性が無くなったグリーンマンティスはゼルートだけに意識を集中させていた。
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