少年期[355]自分のも上げたいが
「やっぱり強くなるのに一番適した訓練方法は実戦を積み重ねる事なんですか?」
演習二日目の昼、一人の生徒がゼルートにそう尋ねた。
「まぁ・・・・・・最初の内はそうだな」
「最初の内という事は次の段階があると」
「次の段階というよりは単にそこで一区切りって話だ。実戦を重ねる事で考えるよりも先に体が動くようになる。そのレベルまで達してそれ以上の強さを求めるなら今出来る事を突き詰め、他の出来る事を増やす。俺はそれ以外の訓練方法は知らんぞ」
今よりも小さい時のゼルートが出来た事は魔法に剣術と体術。それだけであった。
その時点から確かに急成長と言えるスピードで出来る事を増やしていったが、一番最初の最初はゼルートも生徒達と変わらない。
明確な意志を持っているという点を除いて。
「言ってるとこは合ってるのよ。私もまだ考えているより先に体が動くって段階には達していないけど、戦いが始まった、始まる前の助教で自分が何をすべきなのか、出来る選択肢は何なのかってぐらいはパッと頭に浮かぶ。そんで最近の悩みはもう少し攻撃力を高めたいところね」
「ヒルナさんは斥候が専門だからそこまで気にするところじゃないんじゃないですか?」
「そりゃまだまだランクが低くて戦うモンスターが弱かったら別に構わないよ。でもDランクから上の魔物はそうも言ってられないのよ。そうねぇ・・・・・・拠点とする街にもよるけど、遭遇する魔物で言えば昆虫系は厄介ね。力がある奴はむっちゃあるし、単純に力技以外の攻撃方法だって持ってる。あと、甲殻を持つ魔物は単純に堅い。そういった奴を相手にするとき、何も出来ない自分にイライラするのよ」
基本的には少しギャルっぽく軽い雰囲気のヒルナが真面目の表情をしながら言う事で、生徒達も気が引き締まった表情になる。
「攻撃用の短剣に関してももう少し良いのが欲しいところだけ、あまり自分の武器ばかりに金を使うのもデック達に気が引けるしね~~~~」
自身の攻撃力は上げたい。しかしそれならば元々攻撃力が高いデックかソンの攻撃力を更に上げた方が良いのではと思ってしまう。
「それに比べて・・・・・・ゼルートはもしかして索敵とかも出来ちゃう感じ?」
「一応な。子供の時・・・・・・ゲイル達と出会う前は基本的に一人で全部やってたからな」
「そ、それは凄いですね」
ミルシェも基本的な索敵は出来るが、基礎中の基礎な為もちろんヒルナよりもレベルは低い。
だがゼルートの一応出来るという言葉からヒルナと同等かそれ以上に出来るという自信が含まれている様に思えた。
「状況が状況だったか・・・・・・おい、ヒルナ」
「なに・・・・・・そういうことね。やっぱり私より凄いじゃない。数は一、タイプは・・・・・・さっき私が言ってた昆虫タイプかしら?」
ヒルナの予想は正しく、ゼルート達の斜め方向から現れた魔物はカマキリの姿をしている。
「グリーンマンティス、ですね」
「みたいだな。お前ら下がってろ、ちょっと分が悪いだろうからな。フーリアさん達は周囲の警戒をお願いします」
グリーンマンティスのランクはD。Dランクの中でも切断力に特化しており、身に付けていた鎧やガントレットが切り裂かれてそのまま体を裂かれる事も少なくない。
「任せてちょうだい」
「パパッと片付けちゃってね」
「お願いします」
生徒達は自分達でも戦える!! などの無茶な要求を言わず、ゼルートの言葉に従って後方へ下がる。
「さて・・・・・・二つ切れ味が良さそうな鎌を持ってるんだし、こっちも二刀流で行くか」
アイテムバッグからもう一つの長剣を取り出し、二つの剣を構える。
ゼルートの準備が整うのを待っていたのか。それとも周りの人間の攻撃を恐れて一対一の状況になるのを待っていたのか・・・・・・どちらにしろグリーンマンティスはゼルートが構えるまで攻撃を待ち、準備が整った瞬間に自慢の鎌で斬りかかる。
「っと、んのっ、相変わらず防ぎ辛い攻撃だな!!」
カマキリ型の魔物が持つ鎌は魔物の意志によって斬撃が刺突のどちらかに切り替える事が攻撃中に出来る。
斬撃の場合は防ぎやすいが、刺突の場合は剣や槍の刺突と比べて向かって来る方法が違う為、防ぎ辛い。
(けど普通に反応出来るタイミングで変えてくるから防ぐ事は出来る。つか別に躱しても良いんだが、それだと生徒達が参考に出来ないだろうし)
同等かそれ以上の力を持つ魔物相手にノーガードで挑むのは酷だろうと思い、ゼルートは参考にしやすい方を選ぶ。
接近戦では一先ず無理だと判断したグリーンマンティスは後ろの飛んだ。
そう、跳んだのではなく飛んだのだ。
「予備動作が要らない分速いな」
接近戦から一旦離れた。だからといってグリーンマンティスからの戦意が薄れていない解っているゼルートは次の攻撃を大体予測出来ていた。
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