少年期[353]単純な一つの理由

生徒達の摸擬戦が終わった夕方、ゼルートはデックとソンと一緒に洒落た店で夕食を食べていた。


「やっぱり良い雰囲気の店だ。ダンの奴も来れば良かったのによぉ」


「あいつは俺がいるんだったら絶対に来ないんじゃないか?」


「マジか!? あいつがそこまで嫌うのは・・・・・・あぁ、ミルシェがお前の事を気に入ってるからか」


ゼルートとしてはそこまで同期の冒険者と対応に差があるのかは解らないが、周囲の冒険者からすれば明らかに対応というよりは表情が違う様に見える。


「ミルシェがゼルートと話している時は俺達の時と違い、どこか嬉しさがあるからな」


「良くそんな事解るな。ソンはそういった事を見抜くのが得意なのか?」


「確かに相手を観察するのは少々得意だが・・・・・・まぁ、これ以上言うのは止めておこう。俺の勘違いという可能性があるからな」


思わせぶりなセリフを言うソン。

その内容を何となく理解したゼルートはまさかと思いながらも、それはそれで悪くないと思っている。


(やっぱり美人な人に好かれるのは嬉しいからな。ただ俺はミルシェさんの事を好いているって感情があるかは微妙だし)


人として、冒険者としてミルシェに良い感情は思っているが、男女の関係で好意を持っているかと聞かれればそれはノーだとゼルートは答える。


「そっすか・・・・・・あっ、後ダンが俺を嫌ってる理由がもう一つあるかも」


「どんな理由なんだ?」


「いや、嫌ってるっていうか・・・・・・取りあえず良い感情は持っていない」


ゼルートとダンの共通点、それは両親にAランク冒険者を持つ事。


(しかもあいつの方が二つ上。まだグレイスさんやコーネリアさんの本位の戦いを見た事がある訳じゃないけど、父さんと母さんにも引けを取らないと思う。そんな二人から生まれたのにも関わらず俺の方がまぁ・・・・・・圧倒的に強いのが気に入らないんだろう)


単純に言えば嫉妬。それがダンがゼルート嫌う要因の一つ。


「ふぅ~~~~ん、けどダンの奴がゼルートに喧嘩を売るような言葉を言っても、物理的に喧嘩を売ってこないって事はしっかりと実力の差は理解してんだよな」


「ダンもその辺りが理解出来ない様な馬鹿では無いだろう・・・・うむ、相変わらず上手い」


熱々の料理を食べながらソンはダンを愚鈍では無いと評価する。


「まぁ、歳が近いライバルがいるってのは良い事だと俺は思うぜ。ただダンがゼルートに一対一の勝負で勝てるイメージは全くないけどな」


現時点で言えばダンはゼルートの経済的な面やコネ的な面も圧倒的に負けている。


「ダンも多少は魔法を使えるらしいが、それでもゼルートには及ばないだろう。確か剣術や体術より魔法の方が得意なのだろう」


「才能っていう点で言えば魔法の方が上なのは確かですね」


ダンもコーネリアの血を継いでいるだけあって魔法の腕は魔法スキルをメインに戦う新人の冒険者よりは上手い。

しかし攻撃魔法に関しては姉であるミルシェの腕の方が高いのも事実。


(継いだ血ってのを考えれば俺は丁度いい感じに受け継いだってことだな)


「つか、ダンやミルシェにはこの先の課題もあるな」


「? どういった課題ですか?」


「あの二人は今グレイスさんとコーネリアさんと一緒にパーティーを組んでるだろ。だからパーティーでのランクも高い。けど二人がこの先冒険者として活動できる時間はそう長くないはず。ミルシェとダンの先を考えればもっと早く二人は自立させるか」


「だろうな。新しいパーティーに入るというのはしっかりとした信頼関係を築く事が出来てからだ。ダンの奴が歳が近い奴らとの交流を持っていない訳では無いが、それでも積極的に関係を持とうとしてる様にも見えない」


「俺達との飲みにも誘えば来てくれっけど、あいつから誘って来ることは無いもんな」


パーティーは二十歳よりも前に結成する事が多い。

それ以降に結成する事ももちろんあるが、二十を過ぎて後半に差し掛かれば殆どの同年代はパーティーを組んでいるかソロでやると決めている者が殆ど。


そもそもな話、デックとソンは二十までにダンが姉離れできるかが心配に思っている。

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