少年期[336]求めるものが逆

「どういう人、ねぇ・・・・・・なんて言えば良いのかしら? とりあえずただ者じゃ無いのは確かね」


「そうだな。冒険者とは、立っている立場が違うというところか。まぁ、実力は一般的な実力を持つ冒険者より上だ。それに容姿やスタイルも跳び抜けている。女でもその見た目に惚れてしまう者がいても可笑しくは無い筈だ」


ルウナ自身も容姿やスタイルはそこら辺の女性と比べれば頭二つ三つほど抜けている。

しかしそのルウナがそこまで褒めちぎる人物はどれ程の者なのか。ミルシェは容易に想像する事が出来なかった。


「そ、それ程までに凄い方がゼルート君に好意を寄せているのですか?」


「確証無いけどね。でも、その可能性は十分にあるわね」


「見た目は勿論だが、なにより性格もゼルートが気に入るタイプじゃないのか?」


「・・・・・・そうね。しっかりと合致してるわ」


現在でゼルートの正室最有力候補の人物。

実力や立場も相当な物を持つ物だが、ゼルートに好意を寄せているかどうかは置いておき、立場だけで言えばその人物より上の者がゼルートの知人に存在する。


その事をアレナとルウナはすっかり忘れていた。


「でもゼルートはこれからまだまだ冒険に生きるでしょうし、誰かと付き合うとかはあまり考えていない筈よ」


「そ、そうですか・・・・・・」


安心して良いのか、それともこれから先の事を考えれば焦ったの方が良いのか、二つの感情は混じっているミルシェの表情は優れないものになっていた。


そんなミルシェにアレナは年長者らしく優しい笑みで言葉をかける。


「言ったでしょ。これからゼルートはまだまだ冒険に生きるって。だからその間にあなたもまだまだ成長出来るって事よ」


「えっ!? ひゃ、ひゃひゃひゃい!!」


自分の気持ちを完全に見透かされたような言葉をかけられたミルシェは思わずテンパってしまい、言葉が可笑しくなっていた。


「シェナンちゃんやヒルナちゃんはそういった人はいないの?」


「私は今のところ特にいませんね」


「私もで~~す。なんというか・・・・・・あまり同業者に惹かれないんですよね。ガサツな奴が多いですし」


「ははは、それは否定できないところね」


世間一般的な冒険者の評価荒くれ者の集まり。

勿論冒険者全員が全員荒くれ者な訳では無い。


だが、荒くれ者がいる者が事実。

そして冒険者はある程度実力がある荒くれ者が生きやすい世界でもある。


「けどぉ、外に出会いを求めようとしても中々良い相手はいないですし」


「私達が常に戦いと隣り合わせの世界で生きているせいか、あまり自分より弱い人には惹かれないと言いますか・・・・・・いくら性格が良く見た目が良くてもって感じですね」


「あぁーーー・・・・・・女性の冒険者にありがちな考えね。まっ、そう思ってしまうのが女冒険者の性ってところもあるし」


アレナがAランク冒険者時代だった頃の女性同業者達には似たような考えを持つ者達が多くいた。

ちなみに、男の冒険者は女性同業者のような強者でなく、守ってあげたくなるような雰囲気を持つ可愛い女子に惹かれる。


「恋愛をしたい者にとっては悲しい性だな。ただ、冒険=デートと考えそうな冒険者がいなくもないと私は思うがな」


「いるわね。そういう考えを持った先輩の冒険者がいたわね。そんな感じ割り切っている人に限って結構良い人と巡り合うのよね」


「そ、そうなんですか!!?? わ、私もそこら辺はもう少し寛容になった方が良いんですか?」


喰い気味に訊いてくるヒルナにアレナは首を横に振って答える。


「別にそういう訳じゃないのよ。変にラインを緩めて変な男に騙されたら最悪自分の人生が無茶苦茶になる可能性があるのよ」


話し終わりにつれて顔が歪んでいくのを見てルウナはアレナの友人がそういう経験をしたのだろうと察する。


「まぁ、その糞野郎は私と同じ同業者の仲間で顔を見ても誰か解らなくなるくらいに秘密裏にボコボコにしたから碌な人生を送れてないでしょう。ポーションだってある程度早い段階で使わないと意味が無いしね」


見る者によっては恐怖を与える笑みをみたルウナは誰かに似ていると感じた。


(・・・・・・あぁ、なるほど。どこかで見た事がある笑みだと思ったらゼルートと似ていたんだ)


類は友を呼ぶ・・・・・・と言って良いのだろうか?

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