少年期[328]そんな人が見つかっても
宿の食堂で朝食を食べていたゼルートはデックとソンに声を掛けられ、現在アレナ達とは別行動をしている。
「悪いな、付き合って貰ってよ」
「別に構わない。今日は特に予定がある訳じゃないからな」
「そうか、それは良かった。本当はダンの奴も呼びたかったんだけどなぁ・・・・・・ものっそい不機嫌な顔で振られちまってよ」
「あぁ・・・・・・そのシーンが容易に想像できるよ」
デック自身も誘っても来ない確率の方が高い事は分っていて誘ったが、予想していたよりも不機嫌な表情で断られたのを思い出して苦笑いになる。
「ダンはコーネリアさんとミルシェの事になると普段より感情的になる。俺はそれが悪い事だとは決して思わない。ただ、もう少し先を見ても良いと思うんだがな」
ミルシェも女である為、いずれ自分の幸せを考える様になる。
姉という立場から飛び出し、恋人に、妻に、母親へと変わっていく。
両親であるグレイスとコーネリアもいずれミルシェに自分達と同じように新しい幸せな家族を持ってもらいたいと願っている。
その新しい家族の中に、勿論ダンは入っていない。
大切な弟という考えは変わらないが、立場が変わるにつれて必然的に距離が開く。
「なんだろうなぁ。ダンの奴が一目ぼれする様な容姿に、心を完全に引き付けてしまう性格を持った人ならダンのその将来ネジ曲がりそうな性格が直るかもな」
(もっとも、その惚れた相手と結ばれるかは別だけどな)
ダンの容姿が悪いと言う訳では無い。寧ろグレイスから受け継いだのが七割にコーネリアから受け継いだの三割といった丁度良い割合の容姿をしている。
それにまだ十四歳だが体格も中々に良く、冒険者として将来有望である事に変わりない。
だが、ダンのシスコン・マザコン思考を断ち切れるほどの美女、美少女が現れたとしてそれ程までの容姿と心を兼ね備えた人物がダンに惹かれるかといえば、ゼルートはそう思えなかった。
「そういえばゼルートは剣と魔法、どっちも使えるんだよな。どっちの方が得意なんだ?」
「剣と魔法どっちが・・・・・・才能だけで言えば魔法の方だろうな」
明らかに自分の魔法のスペックは常識を遺脱している。
魔力量だけは自身の努力が積み重なった物だといえるが、使える属性魔法の多さにその錬度は異常の一言。
勿論、威力の高い魔法等を使おうとすれば無詠唱で発動したとしても、直ぐに攻撃は完成しない。
それでも使える魔法の多さは十分すぎる程の武器だ。
「そうなのか? オークキングとの戦いを見ていた者からの話ではあまり威力の高い攻撃は使っていないと聞いたが」
「・・・・・・確かにそうだったかもしれないな。けど、それは俺が魔法より剣の方が得意って理由にはならない。戦いの中でも魔法は使っていた訳だし。強いて言えば、戦い方は上手いかもしれないかな」
「なるほど、戦い方か。そちらの方が納得出来るな」
「ソンの言う通りかもな。でも、魔法だけを極めようとは思わなかったのか?」
いくら魔法の才能が突き抜けてあるゼルートでも、魔法を極めたと言える程の技量は無い。
今まで剣やその他の武器に、体術やポーション作りなどに使っていた時間を魔法の訓練の時間に回せば、今よりも錬度が高まっているのは確実だった。
「いや、確かに魔法って存在に小さい頃は興味津々だったけど、それと同等かそれ以上に拳で、武器で魔物を倒すって戦い方にも憧れていた。だから殆ど我流だけど長剣や短剣の扱いも磨いたんだ。勿論、中途半端にするつもりもなかった」
魔法も使えて武器も扱える、それだけ聞けばオールマイティに聞こえるが、極めた一にはどう足掻いても敵わないのが現実だった。
「だから冒険者になってからもあまり派手な魔法は使わない様にしてってところもあるかな。あと、大技を放つと普通に大きな隙が出来るし」
「はっ、確かにそりゃそうだな。俺もハンマーで戦う時にそこだけは注意してるからな」
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