少年期[322]久しぶり
道中面倒事が起こる事無くドーウルスへ戻って来たゼルート達は日が落ちるまでまだ時間があったため、さっそく奴隷館に行き二人を奴隷から解放した。
奴隷から解放されても自分を買ってくれた元主人と共に生きる事を選んだアレナとルウナを見た店主のお爺ちゃんはとても良い笑顔でゼルートを褒めていた。
お爺ちゃんに突然褒められたゼルートはどう返事をして良いのか解らず、ただただ照れていた。
最後にお爺ちゃんとルウナが少しだけ会話をしてからゼルート達は表の通りへと戻る。
「まだ夕食までには時間があるけど、どこかに寄る?」
「・・・・・・どうしようか? 確かにまだ夕食を食べるには早い。すこしギルドに顔でも出すか」
特に依頼を探す訳でもないが、何となくギルドに寄ってみようと思った。
ギルドに行けば何か面白い情報を拾う事が出来るかもしれない。
そんなちょっとした好奇心を持ちながらゲイル達と一旦分かれてギルドの中に入る。
「人は結構いるな」
「ちょうど仕事終わりの冒険者達もいるんじゃないか? ほら、あそこでは既にプチ宴会? が始まっている様だしな」
依頼を昼過ぎに終えた冒険者達は既に肉に齧り付き、酒を煽っている者も少なからずいた。
「ははっ、やっぱりこういう雰囲気は好きだな」
「貴族が開くようなパーティーは?」
「堅っ苦しくて嫌だ。ある程度言葉遣いもしっかりとしなきゃいけないし、絶対に中には私は何々家の何々だからお前は私の言う事を黙って聞けば良いんだ!!! な~~んて言うような阿呆が少なからずいるだろうし」
「経験者だからこそサラッと言える言葉だな」
ルウナの経験者と言う言葉にゼルートは五歳の時に王城で開かれたパーティーの事を思い出す。
(懐かしいな・・・・・・飯が美味くて、友達が出来て、王女様と話したのは覚えている。後、阿呆な子供三人と戦ったのは覚えている。いや、戦ったというか・・・・・・最初の初撃以外は俺が虐めてただけか)
三対一の状況で本来はゼルートが虐められているように見えるのだが、試合内容があまりにもゼルートが圧倒している物だったので、戦いを見ていた貴族達には逆にゼルートが三人を虐めているように見える人も多少いた。
「俺としては利点があるのは飯が美味いって事以外あまりないと思うなぁ・・・・・・あれ? あそこにいるのって」
見覚えのある人物にゼルートの足が止まる。
釣られてアレナてルウナもその場に味を止めてゼルートが向いている方向へ顔を向ける。
「あら本当ね、ミルシェじゃない」
「ダンもいるな。周りの奴らは知らんが」
ほぼ同期の面子と話していたミルシェがゼルート達の事に気が付き、笑顔で向かって来た。
「お久しぶりです。オークとゴブリンの群れを討伐した時以来ですね」
「ああ、どうもお久しぶりです。あれから結構経ってますからね。ミルシェさんと話していたのは同期の方々ですか?」
「はい! みんな私達と殆ど歳が同じの友達です!!」
ミルシェの裏表の無い笑みにゼルートは自然と表情筋が緩む。
(この人って絶対癒し系だよな。大抵の相手は話していたら自然と心が落ち着くんじゃないか?)
なんて考えているとゼルートは少し離れた場所から殺気を感じてチラッと視線を向ける。
(・・・・・・相変わらずのシスコンぶりだなダン)
少し前に会った時と変わらないミルシェの弟、ダンを見てゼルートはおもわず苦笑いになった。
「なぁミルシェ、そっちの人達を俺達にも紹介してくれよ」
先程までミルシェと話していた冒険者の一人が興味深そうな物を見る表情でやって来る。
身長は百七十後半とそこそこ背丈が高い少年で筋肉も年のわりには太い。
「ゼルートさん、アレナさんとルウナさんも少し時間を頂いても良いですか?」
冒険者として交流を広めるのも悪くないと判断し、三人は首を縦に振って一つのテーブルに向かう。
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