少年期[312]貴族的な意味なのか?

「・・・・・・何かアジトの入り口前にたくさん集まって来たな」


「全員がサーベルタイガーが食べる食料を取って来たのでしょう。どうする? 今の内に全員倒す?」


「そうだなぁ。取りあえずアジトまで案内してくれたんだしもう用無しだ。とっとと死んでもらおう」


ゼルートは両指の先に風の魔力を集中させる。


「ゼルート様、僕も殺すの手伝うよ!!」


「うし、それじゃあ左の半分は任せたぞラーム」


「了解!!!」


ゼルートからは風の針、ラームからは水の槍が放たれる。


完全な意識外からの攻撃に油断しきっていた盗賊達は自分達が攻撃されたと解らないまま死を迎えた。


「殲滅完了だな」


「そうですね。全員しっかりと死んでいます。これから直ぐに攻め込みますか?」


「・・・・・・どうだな。特に待つ必要は無いしッ、ルウナ!!」


自身の気配感知のスキルが反応し、ゼルートはルウナに確認を取る。


「ああ、どうやらお出ましの様だな。とは言っても、私は今回相手をしないのだがな」


(話し合いの結果、サーベルタイガーの上位種を相手にするのはルウナじゃないのか。となると・・・・・・)


残る好戦組にゼルートが視線を向けると、ラルは残念そうな顔をしており、ゲイルは少し鼻息を荒くして殺る気満々な表情に変わっている。


「ゲイル、戦意が高まるのはいいけど、あんまりにも早く終わらせて後になって後悔するなよ」


「はい、心得ています」


そして盗賊団のアジトの入り口からサーベルタイガーより一回り大きい虎の魔物が現れる。

鑑定眼のスキルを使いゼルートはサーベルタイガーの上位種にあたる魔物を調べる。


「サーロングタイガー。サーか・・・・・・前半の所が変わってるって事はもしかして貴族的意味合いが含まれているのか?」


「グルルルルゥゥ・・・・・・」


サーロングタイガーは涎をダラダラと垂らしているが、地面に転がっている魔物の死体を食べようとはせず、ゼルート達の方を見つめている。


「臭いでばれてるみたいだな。俺とアレナ、ラームで中の盗賊を全員潰す。サーロングタイガーの相手はゲイル、ルウナとラルは周囲の警戒を頼む。んじゃぁ・・・・・・行くぞ!!!」


その場から一気に速度を上げて駆け出すゼルートとアレナとラーム。

三人を奥に行かせてはならないと思ったサーロングタイガーだが、自分の後ろに向かう三人と我前の敵を同時に相手をするのは無理だと判断し、意識を切り替える。


「ほう、全員を相手にするのは無理だと判断し目の前の敵だけに集中するか、良い判断だ。さて確かゼルート様がサーは貴族の意味合いがあると言っていたな。ならば名乗るとしよう」


ゲイルは自身の体から溢れ出さないように抑えていた闘志を完全に開放する。


「我が名はリザードマンのゲイル、お前に一騎打ちを申し込ませて貰う」


「グルルルル、グルルゥゥアアアアアアア!!!!!!」


サーロングタイガーの方向が合図となり、一体の虎とリザードマンが激突する。




「結構デカい方向だな」


「そうね。ただ・・・・・・普通の咆哮とは違う気がするわ」


「咆哮に何か自身への効果が含まれているって事か?」


周囲の仲間などに効果を与える咆哮が一般的に多いが、ゼルートは自身を鼓舞して能力を上げる咆哮があっても可笑しくは無いと考えている。


しかしアレナが感じた普通の咆哮との違和感はそれとは違った。


「そういったのもあるかもしれないけど、私が感じたのはこう・・・・・・誇り高いとでも言えば良いのかしら? あの方向は勿論相手に恐怖心を与える物だと思うけど、それ以外にも何か感じさせる咆哮だと私は感じたのよ」


「恐怖以外の何かかぁ・・・・・・やっぱりサーって言うのはそういう意味があったのかもしれないな」


鑑定眼を使った時に気になったスキルをゼルートは思い出す。


(獣の誇り・・・・・・どういった内容のスキルかまでは読み取る時間は無かったが、そう簡単には殺れそうにはないかもしれないぞ、ゲイル)


ゼルートは今頃サーロングタイガーとの戦いを楽しんでいるであろうゲイルの方をチラッと見る。


「ゲイルさんの事が心配ですかゼルート様?」


「いいや、全く心配してないよ。とりあえず、こっちをささっと対処しようか」


「早速お出ましって事ね」


三人は剣に手を掛け、手に魔力を集めてサーロングタイガーの咆哮に反応してやって来た盗賊達に容赦無く攻撃を開始する。

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