少年期[306]そういう意味では無く

素材や魔石を譲った後、ゼルート達は四人の冒険者達と一緒に近くの街へ向かっている。


「すみません、自分達の為にわざわざ街まで付いて来てもらって」


「気にするな。日が暮れてから動きが活発になる魔物もいる。特に夜目が効く奴はな。せっかく助けた冒険者達が後日死んだって分ったら目覚めが悪い。な、ラーム」


「うん! もしそんな事になったら美味しくご飯が食べられないよ」


ラームの言葉にそれは少し言葉のチョイスが違うのではとゼルートは思ったが、敢えて声には出さなかった。


「そ、そうですか。それにしても・・・・・・本当に人の姿になれるんですね」


見た目優男な冒険者は未だに慣れない様子でラームの姿を見る。

他の三人も同様に、少し前まで完全にスライムの見た目だったラームが人の姿をしている状態を、未だ慣れない状態で見ている。


「さっきも説明したけど、ゲイルやラルも今は人の姿になっているけど、本当は魔物で俺の従魔だ」


「みたいですね。竜人族でもない限り、尻尾は生えないかと」


見た目が完全な人族の状態で尻尾を生やした事で四人はゲイルとラルが見た目通りの人では無いと納得出来た。


「あの、街まで送ってくれるのは本当にありがたいっす。でも、俺達が拠点にしている街にはそこまで大したところじゃないですよ」


「まぁ・・・・・・俺はその街の事を知らないからあれだけど、酒場の一つや二つはあるだろ。のんびりとサーベルタイガーを探すのもありだが、ある程度の情報は持っていても良いと思ってな」


「確かにゼルートの言っている事は間違っていないわ。そういった魔物の情報に関わらず、酒場には色々な情報が飛び交う。大半は利益の無い情報かもしれないけど、中には無視できない情報もある」


アレナの確信的な言葉に経験値が自分達とは違うと、四人の冒険者達は本能的に思わされる。


「ただサーベルタイガーが群れているか、単独で行動しているかどちらなのかが問題だな」


「それは大事な問題ですね」


ルウナとゲイルの言葉に気の弱そうな女の冒険者が不思議そうに首を傾げる。


「えっと・・・・・・ゼルート君達が受けた依頼をサーベルタイガーを複数討伐するものなのですか?」


「ああ、それなら納得がいくわね。サーベルタイガーが複数で襲い掛かって来るなんて想像もしたくないけど、ゼルート君達なら三、四頭ぐらいなら一度に襲い掛かって来てもなんとかしそうだし」


少し勘違いをしている二人にゼルートは苦笑いになりながら説明する。


「別に複数討伐が依頼内容じゃない。討伐数は一体で十分」


「なら、サーベルタイガーの素材や魔石が複数必要という事かい?」


「それも違う。あれだ、俺達は結構戦いが好きな部類なんだよ。アレナを除いてな」


ゼルートの言葉にアレナはウンウン、その通りと何度も頷く。


「私も摸擬戦程度の戦いなら歓迎するわ。でも命のやり取りの範囲まで及ぶ戦いを楽しもうとも思わないわよ」


「そう言いつつアレナはある程度のモンスターならば余裕で倒すじゃないか」


「倒せるだけで別に楽しんではいないの」


ルウナのやっぱり楽しんでいるんじゃないかという言葉をアレナはバッサリと否定し、手のひらを左右に振る。


「アレナはああやって命がけの戦いは好きじゃないって否定してるけど、実際戦いが始まれば普通に強いからな」


「そ、そうなんだ・・・・・・でも、アレナさんは年齢的には僕たちの少し上ぐらいだよね」


「多分そうだろうな。それでも・・・・・・取りあえずなめて声をかけてくる馬鹿な男を捻り潰すぐらいは余裕で出来る筈だ」


ゼルートの言葉は文字通り事実。そう、事実なのだが本人がいる前では軽々しく言って良い言葉では無かった。


「ゼルートぉ・・・・・・それじゃあ、私が暴力女みたいじゃない!!」


「おわっ!? いきなり大声出すなよ。悪かったって、俺の言い過ぎでした!」


女子のデリケートな部分に触れてしまったのかと思い、反省をするゼルートだが。

自分が言った事が嘘だとは思わなかった。

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