少年期[258]分かってはいても

普段は出さない不敵な笑みを浮かべながらアレナはロングソードに雷と火の魔力を纏い、突きの構えを取る。


(ゼルートは勿論、ルウナも強くなっている。私も止まったままじゃないられないからね)


初めて武器に二つの属性魔力を纏わせる。ぶっつけ本番。

ゼルートから貰った鉄のロングソードが悲鳴を上げ始める。


「レイジングスタッブ!!!」


放たれた雷火の突き。


今までの魔弾や斬撃と比べものにならない速さに、オーガは全く反応する事が出来なかった。

結果・・・・・・避ける事は出来ず、眉間に雷火の刺突が突き刺さり脳を焼き焦がす。


ここに来て、ようやくオーガは目の前の人間の掌の上で自分は転がされていたと理解出来た。

ようやく・・・・・・理解する事が出来たが、時既に遅く瞼が降りて行き視界が狭くなり、目の前が真っ暗になる。


「どうやら上手くいったみたいね。ただ・・・・・・ゼルートに貰った剣が使い物にならなくなったわね」


アレナはダンジョンに入る前に、ドワーフが店主の武器屋で買ったショートソードを取り出す。


「贅沢を言えば、ミスリルを使った武器が良いのだけれど・・・・・・流石にそれはゼルートに甘え過ぎね」


鉱石の中でも武器や防具に使う素材として一級品のミスリルは、硬度は勿論高いが魔力を良く通すため武器に属性魔力を纏って戦うタイプの冒険者や騎士は喉から手が出るほど欲しい。


が、中々に値が張るので冒険者でも最低でランクB以上の者でないと買う事が難しい。


「・・・・・・でも、相談ぐらいしても罰は当たらないかしら?」


かなり太っ腹であり、懐が温かいどころか熱い主人に頼めばもしかしたら買ってくれるかもしれないと思い、セフィーレ達の後方へ向かうアレナの足取り軽やかになっていた。




(短期決戦で終わらせる。そしてノーダメージが理想。ならばこれが一番手っ取り早そうです)


最後の取り巻きのオーガと対峙したラルは口に雷魔力を溜め始める。

その行動が何を意味するのかを察したオーガは手に持つ斧をラルに投げつける。


投擲のスキルを持っているため、補正として速さと威力が上がるがラルにとっては難無く買わせることが出来、その間も魔力の充電を忘れない。


ラルが逃げた方向に駆け出し蹴りを放つが、宙に跳んで躱される。


(よくよく考えれば空中で魔力を溜めて待機していれば無駄な動きをせずに済みましたね)


遠距離攻撃を繰り出す事は無いと考えたラルの気は少し緩んでしまう。

だが、宙を飛ぶラルに対して特に焦る事無く行動するオーガにラルは警戒心を強め、どんな行動を起こすのかを予測する。


(しゃがんで右手を地面に・・・・・・そういう事ですか!!!)


オーガの遠距離攻撃が放たれる一歩手前で予測が付いたラルは即座にその場から離れる。


するとラルがいた位置にはオーガが地面を抉って飛ばした破片が通り過ぎていた。


そこまで数が多い訳では無いが、オーガの腕力から放たれるため速度は半端な物では無い。

威力はそこまで無くとも、目に入れば視力を奪われて跳躍したオーガの攻撃を喰らう可能性は大いにある。


(オーガにしては単純な物では無く、厄介な攻撃を使いますね。そこは称賛しますが、これで終わりです)


充電が完了したラルの口から雷のレーザーブレスが放たれ、オーガの頭が消し飛ぶ。


ラルの攻撃が放たれる直前にオーガは顔を防御しようとするが、あまりの速さに間に合わず雷のレーザーブレスに為す術もなくやられてしまう。


オーガが完全に死んだのを確認したラルはオーガの死体を背に乗せ、セフィーレ達の後方へと移動する。

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