少年期[257]刷り込まれる狙い

「さて、オーガと戦うのは久しぶりね。ダンジョンから生み出されたオーガなだけあって、地上のオーガよりやっぱり強そうね」


アレナは鑑定系のスキルを持っていないが、今までの経験上から目の前のオーガの強さが地上のオーガと比べて違うという事は一目で分かった。


だが、元Aランクの冒険者だったアレナは口ではそう言いながらも、表情に焦りは一つも無い。


「ガアアアアアアァァァアアアアア!!!!!!」


手に持っているアレナから見れば大剣と言える剣をオーガは軽々と片手で扱い、アレナに斬りかかる。

真上から振り下ろされる剣に対してアレナは横に跳んで躱す。


そして躱すだけで終わらず、剣を持っていない左手で魔力の弾丸をオーガの顔面に向かって放つ。

しかしオーガは顔を横にずらしてそれを躱す。


「あら、意外に反応が良いのね」


軽口を叩きながらもアレナは止まらず、今度は自分から斬りかかる。

自身の懐に潜りこむアレナの攻撃を予測したオーガは剣を盾にするようにタイミングを合わせて地面に突き立てる。


だがそれをあざ笑うかのようにアレナは進行方向を無理やり前方から後方に変え、斬撃を魔力の弾丸同様に顔面目掛けて放つ。


完全に自分の予想が外れたオーガは慌てて膝を折ってしゃがむ事で傷を負わずに済む。


「これも躱すなんて中々やるじゃない。上手くいけば両目が潰れたかもしれないのに」


恐ろしセリフをアレナは素で言うが、冗談では無く本気。

オーガはそこそこのレベルで皮膚強化のスキルを持っているため、ランクの低い武器では大した傷を与える事が出来ない。

そして身体強化のスキル、魔力を纏う事で身体能力を向上させる技術も使える個体が少なくないので、冒険者側は最低でも武器に魔力を纏わせる技術、もしくはランクが三以上ない武器では中々に厳しい。


勿論武器に属性魔力を纏わせる事が出来るなら話は別だが、それが自身の力で出来る冒険者がそもそも少ない。


しかしモンスターにも急所は存在し、人型の性別が雄のモンスターなら男と変わらず睾丸。

そして身体の重要な部分だが露出されている眼球。

そこを潰す事が出来れば形勢をひっくり返す事が可能になる。


特に眼球を潰されれば、相手の居場所を確認するために気配感知のスキルを使わなければならない。

勿論嗅覚や聴覚が優れているモンスター別だが、周囲の情報を手に入れる手段を変える為に方法を帰らなければならない為、少しの間だが隙が乗じる。


アレナはあわよくばその隙にオーガを殺そうと思ったが失敗に終わる。


「あなたを相手に鈍った体を鍛え直す・・・・・・っていう案を思い付いたのだけど、時間が無いからそれは却下ね」


小さく溜息を吐き、残念そうな顔をするが直ぐ様次の行動にアレナは移る。


攻撃を躱しては頭を狙う。攻撃を受け流しては頭を狙う。攻撃を相殺しては頭を狙う。

執拗に顔面を襲う攻撃に最初こそ予想外な体制から繰り出される攻撃に慌てていたが、狙われる個所が頭だけと分かったオーガは次第に焦る事無く攻撃を躱す。


そしてオーガは体術スキルで習得できる振踏とパワースラッシュを掛け合わせて放つ。


が、それはそれはアレナが放った魔力の弾丸・・・・・・では無く、雷の弾丸によって剣を振り切る前に止まってしまう。


狙われた場所は執拗に攻めて来た顔面ではなく手。


どうせ次も狙いは顔面だろうと考えていたオーガは雷の弾丸をもろに喰らってしまう。


「同じ事が何度も続いたからって、最後まで同じとは限らないのよ」

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