少年期[253]ある意味運が良い

飯を魔道具などで交換した時と同様に、喉元に刃を突きつけてやろうかとゼルートは思ったが、それではいつもと変わらないので別の方法を考える。


(どうしようか・・・・・・俺じゃ見た目のお陰で相手の力量を把握できる相手ではない限り、今この状況の様に舐められて話し合いで解決は出来ない。・・・・・・・・・・・・ふぅーーーー、あまり目立たずに冒険者生活を送るって考えは捨てるか)


ゼルートは先を見越してこれからの行動を変える事を決断し、それがきっかけとなって今の状況を力を使わずに解決できる方法を思い付く。


「セフィーレさん。この阿保共はアゼレード公爵家の次女であるセフィーレさんにたったの金貨数枚でボスに挑む順番を変われと言っていますが・・・・・・どうしますか? 物理的に潰す事も出来ますが、今回の事をギルドに伝えてこいつらを冒険者として生き辛くする事も出来ると思いますが、どうしますか」


公爵家という言葉を聞いた直後に六人組の余裕そうな表情から一転し、焦りを含んだ表情へと変わる。

六人組は冒険者として数年ほど活動しており、王都にも依頼で行った事もあるので有名な貴族の名前は幾つか知っていた。

その中にはアゼレード公爵家の名前も当然含まれている。


ゼルートに金貨を渡そうとしてた男の手が震え始め、手のひらから金貨を零れ落としてしまう。

だが自身がやってしまった出来事の大きさに怯え、金貨を拾おうとしない。


「そうだな・・・・・・顔と髪色に装備は殆ど覚えた。今回の事はボスを倒し終え、地上に戻ったらこの街のギルド長に伝えさせて貰おう」


言葉の中に嘘は無い。セフィーレは地上に戻った時に本気でギルド長に今回の事を伝えようと考えた。


セフィーレの言葉を聞いた六人は顔面が完全に蒼白になっていた。


今回の事をギルド長に伝えた場合、六人にどのような罰が下るのかセフィーレは知らないし、関与するつもりもない。

ただ、貴族に大して今回の様な事を仕掛けるという事が、どれだけ危険なのかを知って欲しいという思いもある。


(貴族の中には自身に箔を付ける為にダンジョンを攻略する者も少なからずいる。そして中には当然プライドが高い貴族もいる。今回のような態度を取ればその場で斬られても文句は言えない)


法廷に立った時、唯の一冒険者と貴族では相当上手く根回しが出来なければ勝つ事は出来ない。

それに場所がダンジョンともなれば殺された死体は残らない。


目の前の冒険者達がそんな状況を打破できるほど力と権力があると、セフィーレは到底思えなかった。


「あ、あああああああのの。おおおおおお俺達がわわ悪かった、です。ちょ、調子に乗ってす、すすすみませんでした」


金貨を落とした男は生まれたての小鹿の様にプルプルと足を震わせながらゼルート達に頭を下げる。

男に続いて仲間の男女も慌てて頭を下げる。


このまま事が進めば自分達が今まで冒険者として築き上げて来た物が一瞬で崩れてしまうかもしれない。

それだけは何としても避けなければならなかった。


だが、セフィーレは自分の言葉を取り消すつもりはない。


「謝罪は受け取らない。今回の事は宣言通りギルドに報告させて貰う。相手の服装や雰囲気、力量を見極めずに調子に乗った自分達を恨むんだな」


これ以上は離す事は無いと、セフィーレは門の方を向いて意識を切り替え、ボス戦に集中する。


六人は希望が立たれた事で全員膝から崩れ落ちる。

同業者としてほんの少しだけ可哀想だと思ったが、セフィーレの言葉通り相手が相手が貴族だと気付けるポイントは確かにあった。

それを無視して声を掛けてきたのは彼らなので、ゼルートは一切フォローする気はない。

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