少年期[231]全体が無理なら一点を

ロックパンサーが思いっきりずっこけたのをルウナは大笑いしたいのを堪え、右手に炎を纏わせて狼の形に変形させる。


そして全身の力を抜き、全力で脱力してから―――――全力でその場からロックパンサーに向かって駆け出す。


ルウナの足から放たれた衝撃波によってバランスを崩して地面に勢い良くキスしたロックパンサーは、痛みに耐えながら直ぐに体を起こしてルウナの姿を目に映そうとした。


だが、残念な事に視界にはルウナの姿は無い。

変わりにルウナがいたであろう位置が大きく抉れていたのを確認した。


自分を攻撃した後にルウナはその場から移動したという事は理解出来た。


ならそのルウナはどこにいるのか?


答えは自分の右から感じる自分の命を確実に狙いに来ている戦意。

そしてもう一つ・・・・・・下から自分の顎に目掛けて迫りくる熱だった。



一瞬・・・・・・ほんの一瞬だけロックパンサーは下から自分に迫る何かを見る事が出来た。


それは自分の頭を飲み込もうとする炎の咢だった。


「炎狼拳・咢」


ルウナの拳に纏う炎の狼の口が手の動きに合わせて大きく開く。


オークジェネラルと戦った時はそのまま炎の狼をぶつけた。しかし今回の相手にはそれでは倒せないとルウナは思っていた。


魔法には相性が有り、その中で火、炎は土や岩に弱い。余程の火力でなければロックパンサーが纏う岩の装甲を熔かす事は出来ない。


それならどうしたらロックパンサーの隙を突いて倒す事が出来るか・・・・・・ルウナ考え抜いた結果は一つ。


首を胴体から切り離せばおそらく死ぬだろう。


その単純かつ明快な言葉をゼルートが聞けばそりゃそうだと、笑いながら同意するだろう。


単純な考えから導き出された答えは・・・・・・見事にロックパンサーの首元に牙を立て、食い千切ろうとしている。


「・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・ふぅ、上手くいったな」


炎の狼の咢は見事にロックパンサーの首元を食い千切った。


頭部を失ったロックパンサーの体は数秒経った後、力なくその場に倒れ込んだ。


自身の力で強敵と言える相手を倒す事が出来たルウナの顔はとても満足気な表情をしている。


「いや~~~~~、今回の戦いは本当に楽しめたな。オークジェネラルとは火にならなかったな。魔物のランクとしては変わらないと思うんだが・・・・・・まぁ、単純な相性の差か。さて・・・・・・ダンジョンの魔物はラルを最大の敵と認識したのかもしれないな」


自分の戦いが終わる前にゼルートの戦いは終わっていた。


しかしラルの戦いはまだ終わってい。これから最終局面と言える場面に突入していた。



魔物の群れに囲まれているラルはその強さには驚いていないが、種類の多さには驚いていた。


(スライム、ホーンラビット、ブラウンウルフの上位種がいるのは勿論、アイアンアント、リザードマン、それにヒポグリフ。それに・・・・・・なんでレイスまでいるんでしょうか? 謎すぎますね。それに一番奥に・・・・・・アイアンゴーレムですね。いくら何でも種類が多過ぎな気がします。まぁ、洞窟内で出てくる魔物としては・・・・・・ギリ妥協できるところですね。それに・・・・・・竜種の私のここまでの純粋な敵意を向けてくるなんて・・・・・・)


静観な表情から一転してラルは獰猛な笑みを浮かべた。


(この上なく良い心地ですね・・・・・・逃げ出さずに最後まで抗ってくださいよ)

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