少年期[230]厄介極まりない体幹と特性

ルウナが拳や蹴りに魔力の塊、そして肘と膝を、果てには頭突きを放つ。

だが、ロックパンサーには全て直撃はしていなかった。


ロックパンサーが爪や蹴りに突進、尻尾による攻撃や岩の爪をロケットパンチの様にを放つ。

しかし、ルウナには決定打となるダメージは与えられていない。


まだお互いに探り合いが続いていた。


ルウナはロックパンサーの動きが何となくだが読めるようになっており、動きを捉え始めている。

しかし予備動作が少ない状態から大きく動ける脚力により、ルウナの攻撃は掠りはするものの体を覆う岩を貫通してダメージを与える事は出来ていない。


ロックパンサーもルウナと同じく中々決定打を決める事が出来ていない。

最高速度に到達する速さは現時点でルウナを上回っているため地に足が付けば大概の攻撃は避ける事が出来る。

だが攻撃は幾ら初速が速いといっても軌道は直線、ルウナの反応が間に合わなくても予測する事が出来る。


空中で体を自在に攻撃を加える事が出来る体幹をもってしてもルウナに致命傷を負わせる事は出来ていない。


一般的な冒険者なら攻撃を躱す事が出来ずに大ダメージを受ける筈なのだが、ルウナにはロックパンサーの様な動きを出来る人物に心当たりがあり、そいつならどうやって動くかを考えながら攻撃を避けていた。


「ふぅーーー・・・・・・思っていた以上に厄介だな。二十階層のボスに動きが似ている・・・・・・けど、それはスキルによるものでなく、単純な体の特性みたいなものだろう・・・・・・本当に厄介な後ろ足だ」


警戒心を解かずに愚痴るルウナだが、解決策は何となくだが頭の中に浮かんでいた。


(足場を何とかすれば勝機はありそうなんだが、場所を選ばなければ私まで動きずらくなってしまうからな・・・・・・そう言えばゼルートが衝撃波を放つ技を教えてくれたな)


ゼルートはルウナとアレナの二人にちょいちょい自分が考えた攻撃方法を教えていた。


「ふふ・・・・・・やってみる価値はありそうだな」


ルウナの次の攻撃手段が決まったのと同時に、ロックパンサーも自身に掠った攻撃は自分の体にダメージを与えずとも、体に纏っている岩は掠る度に砕けている。


身体機能を失わない程度に岩の装甲を厚く、攻撃部分である爪と尻尾の部分を鋭く・・・・・・全てを斬り裂けるほど鋭利な形状に変えていく。


その姿はさながら岩の鎧と言える物だった。


纏う岩の形状を変えたロックパンサーに警戒心を強めるが、ルウナの作戦は変わらない。


「・・・・・・・・・・・・」


無言でゆっくりと構えを取る様に体を動かす。この動作自体に意味は無い。

重要なのは相手に悟られずに右足を地面に動かす事。


ルウナの動きに隙が生まれたと思ったロックパンサーは一瞬で最高速度に達する為に後方の両足を屈める。


その予備動作を見逃さずにルウナは地面を強く踏みつけ、攻撃に移った。


「ハッ!!!!」


速く、強く踏みつけられた地面から一筋の魔力がロックパンサーの足元に走りだす。


そして・・・・・・・・・・・・ロックパンサーが地面を駆けようとした瞬間、足元の地面が大きな罅が入る。


「!!!!????」


いきなり足元の地面が崩れた事により、ロックパンサーは大きくバランスを崩してしまう。

最高速度まで瞬時に加速できる力が方向転換してしまった事で、ロックパンサーは地面に勢いよく顔面から激突してしまった。


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