少年期[217]あながち間違ってない
「ふぅ~~~~、体が大きくなるまで毎回こんなことが続きそうだ。自分の見た目はそんな嫌いじゃないんだけどな」
ゼルートは自分の前世の容姿と比べて、今の容姿の方が遥かに良いと思っているので、全く不満はなかった。
「身長ばかりはな~~~~~、魔法やスキルでどうこう出来る物じゃないからな。まぁ、容姿や年齢のせいで不当な理由で絡まれたら、今回みたいな対処を取ればいいだけか」
夕食と飲み物と交換で手に入れた指輪のマジックアイテムを見ながら、ゼルートは上機嫌な足取りでアレナ達の方に戻った。
「た~~だいま」
「お帰り、一悶着あったみたいだったが、どうやら無事に済んだようだな」
会話の内容が良く聞こえていたルウナは、ゼルートと五人の冒険者の間でどんなやり取りあったのか、全てわかっていた。
「一悶着があったのを分かってたんだったら、助けてくれても良かっただろ」
「そうは言ってもな、私も年齢は十五だ。私が行った所でゼルートと同じような展開になっていた思うぞ」
「・・・・・・確かにその可能性は否定できないな」
ゼルートはため息を吐きながら椅子に、ドカっと腰を下ろした。
夕食を再開しようとしたゼルートに、五人組の冒険者とのやり取りを見て疑問に思ってことを、アレナが聞いてきた。
「そういえば、料理と飲み物を渡すとき物々交換していたわね。てっきりただで渡すのかと思っていたわ」
「あぁ・・・・・・まぁ、相手が冒険者になりたての奴らなら、ただで渡してたと思うけど、ベテラン・・・・・・っていう程年齢はいってなかった筈だけど、それでも冒険者になって五、六年は経っている様に見えたからな」
「・・・・・・ゼルート殿の、その線引きはどういった内容なんですか?」
ゼルートがどういった考えで、そこら辺を区別しているのかが気になったカネルは、夕食の手を一旦止めてから聞いた。
「なんていうか・・・・・・新人の場合は、まだこれから先の可能性とか、高みに行ける道へのチャンスを残してあげるべきだと思うんだ。大概の新人て、碌に準備や下調べをぜずに冒険してしまうって、父さんに聞いてさ。それって凄くもったいない事だろ。本当は、もっと強くなって有名になれたかもしれない、大勢を救うような奴になれたかもしれない、そういった奴らが新人の中にいるかもしれないだろ。そうでなくても、まだ先がある奴らから、何かを絞り取ろなんて思わないよ」
ゼルートの考えを聞いたアレナ達は納得しながらもその優しさに、感嘆していた。
(まったく、それは年齢的に言えば自分にも当てはまるはずなのにね・・・・・・キレたら手に負えないんだろうけど、本当に基本的には優しいわよね、ゼルートって)
ゼルートの新人への気遣い? にアレナはゼルートの年齢を考えると、思わず苦笑いになった。
「それで、ベテランからはなんで対価を貰ってたんだ」
「何でって、そりゃ、何年も冒険者をやってたら、準備すること、下調べをすることがどれだけ大切かは分かってる筈だ。勿論、食料の大切さもな。だから代金を貰ったんだよ」
「なるほね・・・・・・ゼルート、あなた本当は三十歳ぐらいだったりする?」
「・・・・・・確かに精神年齢は三十歳ぐらいかもな」
ゼルートは笑いながら答えたが、アレナに聞かれたとき、少しドキッとした。
そして、質問に対して冗談に聞こえるように、だけど本当の事を話す。
(いやーーーー、鋭いなアレナは、確かに精神年齢はそろそろ三十になるからな。あながち間違ってはいないんだよな)
ゼルートの背中は、冷汗でびっしょりだった。
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