最終話~幕間3~

えるみん:カウンターだー!

だみ:(びくぅ)いきなりどした?

えるみん:あのね、今回のセッションなんかいつもと違うなーって思ってたんだけどねー?

 サッカーのカウンターだったんだよー!


 お前はいつも通りよく分からんな……とは言わず。


だみ:サッカーにおけるカウンターっていうと一転攻勢に出るようなイメージがあるけど……つまりどういう事?

えるみん:ふっふー。分からないなら教えてあげましょうー。



えるみん:『登場人物全員』なのです!



だみ:…………。


 余計分からなくなったぞ、どうしてくれるんだ。

 どや顔のまま何も喋らないえるみんと、全く伝わらなくて沈黙するしかない私が部屋で互いの出方を窺ってる。助けて。


えるみん:……あれ、伝わってない?

だみ:伝わると思ったのか。


 力強く頷いたえるみんに、私は深い溜息を漏らした。『伝わると思った』という情報で、ようやく通訳判定に必要な素材が揃ったからだ。


だみ:仕方ない、通訳判定に挑戦しようか。

 まず、キーワードは『カウンター』『登場人物全員』『伝わると確信していた』そして『いつもと違うセッション』

 要はセッションの内容、特にPCとNPCの立ち位置について言いたいんだろう。

 ここまで合ってる?


 頷くえるみん。よしよし、それならなんとなく分かるぞ。


だみ:つまりサッカーのカウンターっていう言葉が指しているのは一転攻勢じゃなく、攻める側と守る側が変わるように『立場が入れ替わった』って事を言いたいわけだ。

 そう捉えると、登場人物全員が今までの立場とは違う方針で動いているって事になる。特に顕著なのはPCたちだな。


 春見はこれまで影裏に決定権を委ねる事が多かった。

 しかし今回は、弱かった自分を残しつつも、強い信念を持ったRPを。


 影裏はこれまで周囲の大切な人を守るためなら自らを省みなかった。

 周りを守るという立場は残しつつも、しかし皆を信じ自分を諦めないRPを。


えるみん:そういうことなのです! どやぁ!

だみ:どやぁ、じゃねぇんだよ。分かるかってんだ!

えるみん:えーー、でもだみだってそういうRPの変化を感じてたでしょー?


 それについては、まあ。だからこそお前が、伝わるって確信している事が通訳判定の素材だったわけだしな。


だみ:なんていうか、もっとこう、分かりやすくは言えないの……?


 そう呟かずにはいられない私だった。ちなみに返ってきた答えは「めっちゃ分かりやすいしー」だったので溜息をもう一度漏らす羽目になったのだ。


だみ:はぁ、これだから……。ええと、次のシーンは、マスターシーンか。

 やりたかった描写だ、今の会話は忘れて頑張りますかぁ!

えるみん:忘れんなしー! でもがんばれー!

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