第三話〜ミドル1〜

GM:ということでミドル1だ! シーンプレイヤーは引き続き影裏。春見にもご登場いただこう!

影裏&春見:シーンイン!

影裏:さあ、何が待ってるかな。

GM:このシーンはN市立高校(PCたちが通っていた高校)の屋上でプランナーと"お話し"するシーンだよ。

影裏:お話(物理)でないことを願うばかりだ。


 数年振りに訪れた母校はあの頃と変わらず彼らを迎え入れる。玄関や屋上に続く扉は、あらかじめ鍵が開けられており、侵入に苦労はないだろう。

 深夜2時55分、君たちは屋上に続く扉を開き、その先に一人の女性の姿を確認する。校庭を眺めるように立つ彼女は、写真で以前確認したプランナーその人だ。


影裏:「…………」

 しばし無言で、その光景を見つめる。

春見:「プランナー……さん」

影裏:「……行こう、春見」

春見:「……うん」


 二人は歩を進め、"彼女"と相対する。プランナーは数瞬、名残惜しそうに校庭を見てから。


プランナー:「……ようこそ。よく来てくれたわ。まずはありがとう」

春見:「……」

影裏:「……どういたしまして。とりあえず罠じゃないようで安心したぜ……プランナー」

プランナー:「そうね。確証の持てない形で呼び出してごめんなさいね」


 少し目を細めて影裏と春見を見る。表情からは感情を読み取ることは出来ない。


影裏:「"はじめまして"か、それとも"久しぶり"か。どっちで挨拶すればいい」

春見:「……どうして、私たちを呼び出したの」

プランナー:「……はじめまして、の方がこの場合はいいかしらね。二人にお願いしたいことがあるのよ」

春見:「お願い……したい事? FHである貴方が」

プランナー:「二人に、ある男の研究を手伝ってもらいたいの。二人にとっても重要な研究よ」

影裏:「……その研究の内容は」

プランナー:「ある女の子の怪我を治す研究。二人もよく知る女の子よ」

春見:「……誰、ですか」

プランナー:「……都築 京香。あなた達と共にこの学び舎で笑った、あの子よ」

春見:「──ッ!?」

影裏:「……なんだと……?」

春見:「どういう事ですか!?」

プランナー:「残念だけど、詳しい事情をここで話すわけにはいかないの。"敵"の行動がまだ掴めていないからね」

影裏:「敵……UGNのことじゃなさそうだが……」

春見:「"説明して"……下さい。それだけじゃ……何もっ!」


 春見の右眼が、魔眼が発動する。感情の高ぶりによる、無意識な言霊による命令だ。


プランナー:「……。いいわ、あなたがそこまで言うなら、少しだけ説明してあげる」

影裏:「……聞かせてもらおうじゃないか」

プランナー:「敵は、UGNの可能性が高いわ」

春見:「……」

影裏:「……最初にわざわざUGNではなく"敵"と言ったのには、何か理由が?」

プランナー:「私もまだ確証が掴めているわけではないわ。ただ、UGN全体が敵とは考えにくい。それだけよ」

影裏:「……なるほど。遮ったな。話を続けてくれ」

プランナー:「……その敵は、都築 京香を狙っているわ。そしてFH内部でも、彼女の存在を知る人間はほとんどいない。知っての通り、 FHは一枚岩ではないわ。彼女を知れば、間違いなく狙いに来る」

影裏:「……何のために」

プランナー:「……FHの実権を握るためよ。UGNの方は何を考えているのか分からないけれど、ね」

春見:「…………都築さんと貴方。どんな関係なんですか。只の同姓同名じゃない……んですよね? 何故彼女を助けようとするんです。都築さんは……本当に彼女なんですか」

プランナー:「なるほど、その目……。どんな関係か、それは難しい質問ね。ただ、大切ではあるわ」

春見:「……どういう意味で?」

プランナー:「切り捨てることも、放っておくこともできない、という意味よ」

春見:「……」

 少々納得していない表情を浮かべる。

影裏:「詳しく教える気はない、と。……なあプランナー。アンタの目的はなんだ。俺たちに研究に協力しろと言う。それは分かった。だがその目的が分からない」


 影裏は鋭い視線でプランナーを射抜きながら、


「京香の怪我を治療して……その先に一体何がある」


 対するプランナーは伏せるように目を細める。


プランナー:「信じてはもらえないでしょうけれど」



「4人がまた笑って話せるようになる。それが私の目的よ」



影裏:「…………」

春見:「…………」

プランナー:「……もし、後悔のない選択をしたいなら。デッドエンドデッド研究所を探すことね」

春見:「デッドエンド……デッド」

影裏:「……随分と意味深な名前だな」

プランナー:「そうね。私もそう思うわ」

春見:「最後に聞かせて下さい。都築さんは……何故怪我を。もしかして……昔のあれから未だに……?」

プランナー:「……想像の通りよ。あれからずっと、昏睡し続けている」

影裏:「……そうか」

春見:「…………」


 すぅ……と春見の魔眼が元に戻っていく。


春見:「お話は分かりました。受けるかどうかは結理君と決めます」

影裏:「……この場で答えを出せるほど、俺たちはアンタの話を鵜呑みにしちゃいないんでな」

プランナー:「それで十分よ。……後悔しない道を行きなさい。──話はここまでね。帰り、気をつけてね」


 プランナーは踵を返す。向かう先はフェンスだ。


春見:「そちらもお気をつけて」

影裏:「天下のプランナーに帰り道を心配されるとはね……じゃあな」

プランナー:「ありがとう。……"また"ね」


 警戒し、その動きを目で追っていた影裏たちの意識の隙間を潜るように、一瞬で闇に溶ける。《瞬間退場》でシーンアウトだ。


春見:「……帰ろう、結理君」

影裏:「っふぅ……そうだな、少し疲れた。帰ろう、春見」


 プランナーとは反対側、階段へと続く扉へと歩き出す二人。しかし春見は振り返り、彼女の消えた先に寂しそうに呟く。


春見:「……都築さん」


 青年たちはその胸に疑問を抱いたまま、家路に着いた。彼女の言う敵とは。デッドエンドデッド研究所とは。そして──プランナー、都築 京香とは。

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