第一話〜エンディング3〜

春見:では、私からもシーンの要望を一つ。

 結理君が外に出かけてる間の春見の描写をしたいな。


 このシーン、大変暗い感情が登場する。どうか、心構えを持ってから読んでほしい。


GM:時刻は影裏が暴走しかけた、ちょうどその時。

 春見は、一人で自室のベッドに腰掛けていた。


春見:「……」

 その目は虚ろで、何処を見ているのかもわからない。

「……私が、”死ね”って言ったら……人が……死ぬ……」

 自身の強大な力に竦んでいる。

「……私、悪い子だなぁ。”死ね”だなんて……」

 その時、春見は京香と桃矢が行方不明となっていた事が判明した、国立病院での出来事を思い出していた。

「……」

 春見の心に渦巻く感情……”不安”、”心配”。彼らを慮る様々な感情が浮かび上がる中……。

 彼女は……一瞬、こう思ってしまう。

 ” こ れ で 、 結 理 君 は 私 だ け の ──── ”

「──ッ! 私、悪い子だ……友達が行方不明になったのに……一瞬だけ……喜んだ……!

 悪い子だ……私なんか……」

 虚ろな表情のまま、春見は卓上のカッターを持ち出す。

 チキチキ……と、刃を出す音だけが、部屋に響く。

「私は……私なんて……!」

アンナ:「そんなことをしても、なんにもなりませんよ。春見様」


GM:部屋にはいないが、声だけが聞こえる。


春見:その声で我に返る。

「……ッ!? アンナさ……ん?」


GM:かぱっと天井の一部が開き、アンナがそこから降りてくる。一回転着地だ。



影裏:!?(笑)

春見:ニンジャ……(笑)

影裏:アイエーーー!



春見:「……いつから、見てたんですか?」

アンナ:「──ごめんね。最初からです」

春見:「……ッ! そう……ですか」

アンナ:「先に言っておきます。失礼します、春見様」

春見:「……?」


GM:アンナは手を振り上げ、パン、と春見の頬を叩く。

 その表情は、一瞬だが、まるで自分の方が泣きそうなように、あなたは見えたかもしれない。

 そのあとで、ぎゅっと春見を抱きしめる。


春見:「つっ!? アンナ……さん?」 叩かれた頬を抑えつつ、驚くな。

アンナ:「その頬は、自分を傷つけようとしたからです。

 決して、昏い感情を抱いたからではありません。

 ……人間は、誰だって我儘です。でも、我儘だから人間とも言えます」

春見:「……」

アンナ:「いいじゃないですか。どれだけ親しくて、どれだけ大切でも。

 人間の感情は表裏一体なんですから」

春見:「ごめんなさい。でも……時々、どうしようもなく自分が許せなくなるんです。

 ……友達が消えたことを喜ぶような人間に……なりたくないんです。

 そんな人は……結理君の側に相応しくない……から…………」

アンナ:「相応しいかどうか、ですか。……ふふっ。

 ごめんなさい。少し、思い出してしまいました」

春見:「……思い出す? 何を?」

アンナ:「安心してください。春見様は、きっと。影裏さんに相応しい女性になりますよ。

 ……きっと、当主様も、そう思うことでしょう」

春見:「……!? もう、そういう冗談はよしてください!

 ……それに、結理君には好きな人が…………。

 ……私なんて、目に入りませんよ」

アンナ:「最後に誰を選ぶのか。それは影裏さんにしか分かりかねます。ですが──」

春見:「……」

アンナ:「春見には春見の、良いところがある。そう思いますよ」

春見:「……ありがとう、アンナさん。その言葉があれば、今日は眠れそうです」

アンナ:「それなら良かった。もし悩んだら、私を呼ぶといいですよ。

 なんでも相談に乗ります。だって私は──」


GM:そこまで言って、アンナは口を開いたまま数瞬固まり、そっと口を噤んだ。


春見:「……私は?」

アンナ:「──いえ、なんでもありません。

 少なくとも、この家の者は、あなた達の味方です」

春見:「……うん、ありがとう。

 ……今日はもう寝ますね! 明日も、朝早くに結理君のお弁当を作らないと!」

アンナ:「はい。おやすみなさい、春見様」

 部屋を出て行って退場する。

春見:「ええ、おやすみなさい……アンナさん」

 その表情は、先ほどの暗いものとは打って変わり、明るいものになっている。

「……結理君」

 そうボソリと呟き、布団に潜り込む。

 徐々に睡魔が襲い始め、彼女は夢の世界へと旅立つ。

 今夜だけは……少なくともいい夢を、彼女は見ることができるだろう。

 この先の事は……誰にも分からない。

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