第一話〜ミドル3〜

GM:さて! 次はミドル3だ。バスに揺られながら帰宅するシーンだね。

 少々重たいシーンになることが予想されるので、あらかじめ心づもりをしておいておくれ。

 シーンプレイヤーは影裏。春見も登場でお願いします!


影裏:シーンインぜよ! 覚醒も近いな、これは。

春見:こっちもシーンイン。かもね。


 さて。影裏と春見、そして京香と桃矢の四人は、バスの最後列の長座席に座っている。乗客はまばらだが、何人かは乗っているようだ。窓の外はすっかり暗くなり、いつの間にか降り出した雨が窓に水滴をつけているね。


影裏:「……雨、か……」苦い顔

春見:「……」

京香:「雨、苦手なの? 結理君」


GM:隣に座っている京香が話しかける。


影裏:「まあ、ちょっとな……。ていうか、雨好きな人の方が珍しくないか?」

京香:「それもそうだね。私もなんか憂鬱な気分になるよ」

春見:「そう? 私は……嫌いじゃないかな」

影裏:「へえ、意外だな。そうなのか?」

桃矢:「かくいう僕も、結構好きさ」

春見:「雨の日は音が静かになるから落ち着くの。世界の中で一人になったみたいで」

影裏:「へえ、そんなもんかね。珍しく意見が割れたな」

春見;「……そうだね。ちょっと珍しいかも」

京香:「でも、なんか春見ちゃんらしいね」

春見:「そうかな?」

京香:「うん。なんとなく、だけどね」

春見:「そっか……。及川君は何で雨が好きなの?」

影裏:「桃矢が雨好きってのも意外だよな。お前、そんなにセンチメンタルだったか?」

桃矢:「いや、僕のはもっと単純な理由さ。

 雨の音を聞いていると集中できるんだ。かすかに聞こえる雑音が、そうさせているのかもしれないね」

影裏:「……なるほどな。そう言われるとお前らしいぜ」

春見:「うん。納得かな」

京香:「ふふっ、そうだね」

桃矢:「ありがとうって言えばいいのかな?」


GM:四人がそんな会話をしていると、


運転手(GM):「次はぁ〜公立高校前、公立高校前〜。お降りのお客様は──」


GM:という案内が聞こえてきた。


京香:「あ、そろそろ着くね」

影裏:「だな。すっかり遅くなっちまった」


GM:京香が腰を浮かせて降車ボタンを押そうとした瞬間──

 バスが急ブレーキをかける!


影裏:「っ! 危ねえ!」

 咄嗟に手を伸ばす!

京香:「わっ!?」


GM:では影裏が伸ばしたその手は京香に届き、すんでのところで体勢を取り戻した。のだが──

 バスは何かに衝突し、あろうことか前面から次々とひしゃげていくではないか!


京香:「っ!? 結理君!」

影裏:「っ──!?」

 咄嗟に方法を模索するも、何も思いつかずに硬直。

春見:「──ッ!?」

 こっちも動けずに体が固まる。


GM:そのまま、君たちはバスと運命を共にした。

 意識を失う直前、影裏に抱きつくように庇う京香を、君たちは見た──気がした。


影裏:京香あああああぁぁぁぁぁっ!



GM:……バスの乗客は、ほぼ全てが即死だった。

 かろうじて生きていた者も、じきに息絶える。

 朦朧とした意識の中、君たちは叫び声を聞く。


桃矢:「京香! 京香ァ!! あ……ああ…………。

 助けなきゃ……、僕が、助けなきゃ…………!」


GM:その後に続く、ダン、と踏み鳴らす音。その音を最後に、君たちは再び意識を失う。

 先に意識を取り戻したのは春見だ。

 じゃり、と足音がした。同時に、連続した、何かの激しい衝撃音も。


???「──春見よ。この世に未練はあるか」

春見:「……?」朦朧とする意識の中、その言葉を聞く。


GM:低くしわがれた、聞きなれない声だった。


春見:「(未練……やり残したこと……)

(……いいえ。未練なんて……でも)」

???「……」

 黙って先を促す。

春見:「……ここで死んじゃうのは、嫌です。まだ……私何も……。

 何も……あの人に返せてない。恩知らずには…………なりたくないです」

???:「……そうか。ならば、儂と契約せよ。そのための”力”を、授けよう」

春見:「(契約……?)……はい、お願い……します」

 息も絶え絶えになりながら。

???「承知した。──義もある。ここに成立した。その望み、果たすとよい。だがまずは──、

 気を、確かに保てよ」

春見:「……?」


GM:唐突に、春見の右目に激痛が走る。それも当然だ。麻酔もなしに手術を受けるようなものなのだから──。


春見:「──ッ!?」

 激痛に悲鳴も上げられず、右目を押さえる。


GM:眼の力が体に馴染むまでの数分間、君は激痛に耐え続ける──。

 春見が痛みに耐えている頃。すぐ近くで倒れていた影裏は、何かの激しい音によって朦朧としながらも意識を取り戻した。

 しかしそれも束の間。また意識が落ちかけようとしている時──声が聞こえる。


影裏:「(……俺は……事故……そうだ……皆を……助けなきゃ……)」

???:「おい。まだ寝てるのか。いい加減起きろよ」

影裏:「(……なんだ、この声……言われなくても、今……)」

???:「さっさと立て。立って前見ろ。このまま寝てると──」

影裏:力を振り絞り、薄っすらと目を開く。

???「お前の大切なもん、全部失うぞ。──春見も、京香も、桃矢も。何もかも全部──”死ぬ”ぞ」

影裏:「──ッ!」

 その言葉に、身体が、心が、硬直する。

「(死ぬ………死ぬ。死ぬ、死ぬ、死、死、死、死死死死死──!)」


GM:それは。父の目。それは。母の目。


影裏:「……あ、う、ああ………‥!」


GM:そのイメージが頭を過ぎると同時に、君の中で声がする──。


影裏:「(嫌だ。それは嫌だ。死にたくない。死なれたくない……”殺されたくない”──!)」


GM:その衝動と共に、君は人外へと覚醒する──。


影裏:「ああ、あ……あ、ああああああぁぁぁぁぁ────!」

 絶叫と同時に、目を見開く。


GM:君が絶叫をあげると同時、何者かがその場から立ち去った──、ような気がした。


影裏:「あああああ、あああああぁぁぁぁぁ────!」

 その叫びと共に、影裏の全身から陽炎が立ち上り始める。

 それは徐々に勢いを増し、風景を歪め、そして──。

 全てを喰らい尽くす黒い炎が、影裏を包み込む。

「あああああああああああああッ!」

 最後の絶叫と同時に、黒い炎が爆散し、そこには──。

「はぁ……はぁ……っ……!」

 白髪を爆炎に煌めかせて立つ、影裏の姿があった。


GM:一方、その頃……。


春見:「ぐぅっ……ぁぁ……ぁぁぁあ!」

 春見が押さえている右目部分から光が迸り、それと同時に体の基礎構造が”何か”によって作り換えられていく。

 肉が、骨が……眼も……何もかもが。

「うぅぅぅうう!」

 うずくまる春見の周囲の空間が曲がり、歪み、そして……

「ふぅ……ハッ……ハッ……」

 激痛が収まる頃には、春見の右目は異形へと成り果てた。


GM:そうして再び立ち上がった君たちの前には、一人の巨漢がいる。


巨漢:「ふ、ふは、ふははは! そうか、君たちが次の”対戦相手”かね!?」

春見:「……”対戦”、相手?」

 思考の定まらない頭で返答する。

影裏:「…………あ゛? なんだ、テメェ」

巨漢:「私は……そう! 悪党(ヒール)だ。ヒール・オブ・ヒール!」

影裏:「おい、おかしいよなぁ。なんでテメェ、”無傷でバスの正面に立ってやがる”」

巨漢:「ああ、その者は私がマットに沈めたよ。向かってくるところをラリアットで一撃KOさ。

 そうとも!私はヒール! キングタイガーだ!!」

影裏:「……お前か。そうか、お前がやったのか……」

春見:「……ッ! 許せない……」

影裏:「ふざけんなよ。テメェがぶっ壊したモンが、どれだけ価値あるものだと思ってる……許さんぞ……絶対に……!」

巨漢:「罵声。憎悪。嫌悪。全てが愛おしい。それでこそヒール。それでこそ──」

影裏:全身から噴出した黒い炎が、巨大な腕の形へと変成していく。

「……御託はたくさんだ……吹き飛べ──!」

 なぜか”出来る”という確信と同時に、黒炎の剛腕を敵に叩きつける。災厄の炎の演出だ。


GM:巨漢のジャームは、避けることも、ガードすることもなく食らうね。


影裏:レネゲイドを喰らい尽くす黒炎が、ジャームの全身を焼き払う。


GM:男はふら、とよろけるも反撃の合図のように目を輝かせる。


春見:「──ッ! ”纏え”!」

 異形へと化した右目……魔眼が春見の怒りに呼応して輝き始め、周囲には黒い蝶のようなものが浮かび上がる。

 春見が手を振ると、それが”合図”かのようにジャームに纏わり付く。

 体に止まった蝶の形は崩れ、×印の刻印がジャームの体に浮かぶ。

巨漢:「ふふはははは! 効かぬ! 効かぬよ!!」

 拳を振り上げ、影裏を捉えようとした瞬間──!

春見:「……”止まれ”!」

 春見の叫びに呼応して、ジャームの体は主の意志に逆らい、停止する。

巨漢:「ふふははは! 私を邪魔するか! アマイマスク!!」

春見:「……煩いです。

 ……”死んで”ください!」

 春見はそう命令する。

巨漢:「ふふ、ふははははっは──」


GM:影裏に向けて振り上げられ、握られていた拳は平手になり、両手で──自らの首を飛ばす。……命じられるがままに。


春見:「…………」


GM:ジャームは笑いながら、地に倒れ伏した。

 君たちは敵対するジャームを屠り、安堵するだろう。


影裏:「……やったか。春見、皆を助けるぞ。俺は応急処置。春見は救急車と警察を──」

春見:「はぁ……はぁ……、うん」

 力を急激に使用した反動から、肩で息をしている。


GM:そう言葉を交わした瞬間、君たちは動けなくなる。

 気の緩み。それはいつか、アンナが指摘した危険。

影裏:「……っ……な、に……!?」

春見:「あっ……」

 急激な消耗に体が追いつかず、地面に膝をつく。


GM:衝動判定だ! ただし侵食増加は4D! 意志の判定に失敗した場合は気を失ってもらおうか。判定の難易度は9だ!


春見:ここでか……生きねば……。

影裏:おっしゃ、いくぜぃ!(ダイスころころ)

 達成値19で成功!

GM:鋼メンタル(笑)

春見:ではここで思い出の一品を使用。意志の固定値+1だ。(ダイスころころ)


 春見が出した達成値は8。つまり……


春見:妖怪が出た(苦笑)

影裏:春見ぃぃぃ!(笑)

GM:いよっしゃあ!(ガッツポーズ)


 続く衝動侵食4Dで、侵食値は影裏が61、春見が60まで上昇。

 いきなり侵食率ボーナスを突破する形となった。



春見:「うぅ……」

 描写とはいえ時の棺とナーブジャックを使用した反動と衝動で、気を失います。是非もないよね!

影裏:「く、はっ……! はぁ……はぁ……あああああっ!」

 叫び、殺戮衝動を強引に振り払う。

「皆を、助け……なんだ……?」


GM:もぞり。影裏の視界の端で、何かが蠢いた。

 それは、死んだはずの死体。先ほど殺したはずのジャームの体が、復元していく。


影裏:「嘘だろ……そんなバカな……!?」


GM:君は衝動を払うのに手一杯で止めることができない。

 ジャームは立ち上がると、影裏を見据える。


巨漢:「…………」


GM:しかし唐突に、明後日の方向へ視線を送り──


巨漢:「そこか。そこにいたか! アマイマスク!」


GM:何処かへと跳び去っていったのだった。


影裏:「……行ったか。……いや、今はどうでもいい。早く皆を……!」


GM:そこへ、足音が近付いてくる。

現れたのは黒髪の壮年男性だ。


壮年男性「ちっ、遅かったか

 そこな少年よ! 手を貸してくれ! 怪我人を運び出すぞ!」

影裏:「っ……はいっ!」

 と、ここで影裏の髪が元の色に戻る。

 影裏は男性と一緒に救助に当たるぜ。

壮年男性:「すぐに俺たちの車が来る。一箇所に集めておくのだ!」


GM:といったところで、救急車(?)が到着する。

影裏:これ絶対、偽装車ですよねぇ……(笑)

GM:その通り(笑)

 ぱっと見救急車に見えるが、よく見れば細部が違く、さらによく見るとただの改造バンだ。

春見:まぁ、そうだよね(笑)


車を運転してきた少年:「お待たせしました、轟木さん!」

影裏:「子供!? それに、この車……。おい待て、あんた達、一体何なんだ!?」




轟木 源十郎:「俺たちは、世界の危機をどうにかするべく集まった──護人会だ」

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