短編まとめ

電話

　今日は僕の友達の話をしようと思う。

　その友達は普通のサラリーマンなんだけどね、ちょっとトンチンカンなやつなんだよ。

ある日、その友達Aが営業に行った帰りにお腹を下して、近くにあったデパートのトイレに入ったそうなんだ。

そうしたら、さっき行ってきた取引先から電話が来たんだって。個室だったから取るか迷ったんだけど流石に取引先からの電話に出ないのはまずいと思って出たんだよ。

　まあ電話の内容は大したことじゃなかったんだけどね。少し話していると隣の個室に一人入って来たんだ。

　その男がなにやら言っているからよく聞き取ってみるとどうやらAが話しかけていると勘違いしているみたいなんだ。

だからAは取引先との電話が終わった後に面白半分でバカにしようとその会話に付き合ってやることにしたんだ。

　こういうところがあいつのトンチンカンと言われる所以だろうね。

少しの間話に付き合っていたんだけど、何か話が噛み合わなくておかしいと思ったそうなんだ。

まあそういうやつなんだろうと思っていたら次の瞬間、驚くことが聞こえて来たんだって。

「なんか隣の個室の奴が話しかけて来るからまた後で掛け直すわ」

　そう、お隣さんも電話していただけだったんだ。　

僕も、Aがここまでトンチンカンだとは思っていなかったよ。