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「ちゃんと食べているのならいいんだけれど、あんまり細いからわたし心配になっちゃうわ。好き嫌いとかしていない?」
「していませんよ。食べるのも好きだし、嫌いな物とかあまりないんで」
お母さんかっ。いや、マンションの管理人さんだし、ここのお母さん的存在かもしれないけど!
「ミケちゃんくらい体格が良かったから安心するんだけれどねぇ」
「俺はあんなにマッチョになりたいとは思っていませんよ」
胸筋が鍛わりすぎて服がパツパツになるくらいのマッチョなんて。バーテンダーなんだし、サラッとベストを着こなしてスマートにシェイカーを振っていたい。
「あら、そうなの? 男の人は皆マッチョに憧れるんじゃないの?」
何その思い込みっ! 確かにブヨブヨの身体は嫌だけど、ムキムキマッチョよりも細マッチョに俺は憧れるからっ。
「憧れませんよっ」
「あらそうなの? てっきりそうなのかと思っていたわ。それなのに、花菱さんは食べても太らない体質なのかと」
いや、これでも暴飲暴食したら腹出るから。それなりにジムとか行って体型維持してるから。
「あら、凄いわねぇ。わたしなんて色々試してみたけど結局ダメで、ダイエットなんてやめちゃったわ。運動はあまり得意じゃない事もあるけど、食べたいものを我慢するよりも、食べたいものを食べて毎日幸せな方が健康な感じがするじゃない?」
うふふ、とそう軽やかに笑う。
「一応娘にも言われているからなんとなく制限はしているけどね。やっぱり美味しいものは痩せないのよね」
朗らかに微笑む姿がなんだか可愛くて。俺としてもちょっとくらいふくよかで毎日笑顔で挨拶してくれる方が断然いい。仕事に行くのも気分が上がるし。
「そうそう、この間頂いたお土産がすっごく美味しいのよ。花菱さん、甘いのは好きかしら?」
「もちろんです」
「あら、いいわね。それじゃぁ少しだけれど持って行って、甘いのが好きな人はきっと口に合うはずだから」
ルンルン、と聞こえてきそうな足取りで保住さんは管理人室に向かう。
きっとそのお菓子は格別に美味いのだろう。だって保住さんが言うのだから間違いないはずだ。
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