丸いカタチは幸せのカタチ
カゲトモ
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「いってらっしゃい、これからお仕事?」
マンションのエントランスを掃き掃除していたご婦人が俺に気付いて声をかけてきた。エプロン姿の管理人さんだ。
「いいえ、これから夕飯の買い出しにでも出かけようかと」
「あら、いいわねぇ。天気もいいし、散歩日和でもあるから」
エントランスを越えた先の庭には陽の光を浴びてキラキラと光る花壇が見えた。アスファルトの照り返しも凄いし、こりゃ暑そうだ。
「今日はすごく良い天気みたいですね」
「そうなの。いい天気ではあるんだけど、凄く暑いから今日は草むしりの予定をしていたんだけれど、明日にすることにしたの」
そう言ってコロコロと笑う。ふっくらとした保住さんの額には、室内だけれどうっすらと汗がにじんでいた。それでも笑顔で接してくれるから暑苦しくはない。
「この季節なのに夏日になると言っていたし、その方が良いですよ。熱中症になったら大変だ」
ただでさえ、保住さんは暑そうだし、なんて失礼か。
「そうよ、倒れないようにちゃんと水分補給しなくちゃね。花菱さんもちゃんとお水とか飲んでる?」
「お酒を飲むのが仕事ですけどね。身体が資本ですから、一応健康には気をつかっていますよ」
俺が身体を壊したら仕事できないし、飯も食っていけない。そのためには無理をせずにちゃんと身体をケアしながら仕事をするのが一番だって勉強したから。遠回りかも知れないけれど、それが一番いい方法だから。
「あら、本当? そんなに細いのに、ちゃんとご飯食べているの?」
「え、食べていますよ。こう見えても俺、結構食べますし」
「あらあら本当? わたしの半分くらいしかないわよ?」
いや、それは嘘。さすがに半分は言いすぎだろ・・・体積的には多分同じくらい?
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