不本意に孕んだ現実感を堕胎する
ささやか
第1話 神様との遭遇
帰宅するとリビングで妹がレイプされていた。
強姦魔はやっぱ小学生はきつくて最高だぜ、おらっ鳴け、孕ませてやるとかなんとか醜い欲望丸出しに喚いており、一方の妹はお姉ちゃん、お姉ちゃん助けて、助けて、いやあああああああああだとか必死に悲鳴を上げていた。
状況を理解した私はひとまず部屋に行って着替えをすることにした。うちの高校の制服はわりと可愛いほうだがそれでも家の中でまで着ていたいとは思わない。
部屋着に着替え終えたタイミングで家の電話が鳴る。
リリカ、電話出といてーと言おうとしたところでレイプされていたことに気づく。あの調子だと電話には出られまい。電話が鳴っている。呼出音は部屋にいても頭蓋に響く周波数で、誰かが出るまで鳴り続けてやるという気概を持った偏執的な調子だった。
仕方がない。私が出るか。気持ちよさそうに妹の膣内に射精する強姦魔の横を通り受話器を取る。
「もしもし」
「ねえ、いまパンツはいてる? 何色のパンツはいてる? ねえ、教えて?」
男の声は耳に粘りつくような気持ちの悪いものだった。
私は返答する。
「パンツははいてません」
「はいてないの。なんで?」
「はいてないからです」
「じゃ、じゃあエッチなことはすすす好き?」
「嫌いじゃないですよ。好きです」
「そ、そそそうなんだ。じゃあ、これからエッチなことしない?」
「いいですよ。どこでしますか? いくら出してくれますか」
男が充分な額を提示したので、私は了承することにした。待ち合わせの場所と時間を確認してから受話器を置く。
「リリカ、私ちょっと出かけるから家のことよろしくね」
妹は泣き叫ぶばかりでろくに返事もしなかった。反抗期なのかもしれない。仕方がないので代わりに強姦魔に声をかける。
「あの、留守をお願いしていいですか?」
「大丈夫だとも! 安心して出かけてくれ給え。俺はリリカちゃんと仲良くヤってるから」
「そうですか。それじゃあお願いしますね」
私はもう一度着替えてから家を出た。
私が少し遅れて待ち合わせの駅前に到着すると、いかにも性犯罪者面した肥満体型の
「あっ、あっ、貴女が
「そうですけど何か」
「ぼぼぼぼ僕がさっき電話した克久です。そそそれじゃあ行きましょうか」
「嫌です」
私は拒絶した。こんな気持ち悪い男は絶対に性病を持っているに違いない。そして用心深い私はこんなこともあろうかと護身用としてチェーンソーを持ってきていたので、軽やかにエンジンを始動させた。どちゃクソ五月蝿い駆動音が響く。凶悪なチェーンソーを見て醜男があからさまに動揺しだした。
「え、何、どうしたのかな」
「殺します」
「は、へ、殺す?」
醜男がポカンと口を開けて間抜け面を晒す。勿論見るに堪えなかった。
「はい。貴方が不快だから殺します」
「死にたくないんだけど」
「それでだから何か問題でも? 貴方の感情や要望を何故私が考慮しなければならないのですか。何故他人の存在を私の人生において考慮しなければならないのですか。私は貴方を不快だと思った。だからこれを排除するために殺害することにした。ほら、実に論理的ではないですか。もちろん貴方が死にたいとして行動を起こすことを止めはしませんし自由にすればいいでしょう。ただ、私は貴方を殺すために必要な行動を行います」
「ひゃぎ――」
醜男は意味をなさない悲鳴を上げて逃げ出そうとしたが、それよりも早く私のチェーンソーが快哉と共に彼の肉体を切断した。
「アびゃあああああああああああああ!!」
悲鳴。
もちろん私は欠片も同情せずに醜男を解体した。鮮血が飛び散って鬱陶しかった。せっかくの私服が汚れてしまったではないか。やはり屑は死ぬときも屑なのだ。
このまま帰宅するか安めの服を適当に買って着替えるか悩んでいると、なんと醜男の死体が急激に発光しはじめた。呆然とそれを眺めているとやがて醜男の死体が金髪長身のイケメンになる。その容貌はまさに美を体現していると評しても過言ではなかった。
「信じようが信じまいが私はこの世界の神。蟻紗よ、私は貴女のような存在が現れることを待っていました」
「エロいことが好きで護身用にチェーンソーを携え、颯爽と性犯罪者っぽい醜男をぶっ殺す美少女をですか?」
「そのとおりです」
なるほど、さすが神様だ。何を考えているのかよくわからん。
「貴女にはこれから異世界に行って魔邪神サテュノリゼを討伐してほしいのです」
「わかりました」
私はわかったのでわかりましたと言った。
「でも家族に異世界行ってくるって伝えておきたいので一度帰っていいですか?」
「いいですとも」
「それと服が返り血で汚れちゃったので神様パワーとかで綺麗にしてもらえたりしないですか?」
「いいですとも」
神様は神様パワーで私が着ていた血塗れの服を夕焼け色の着物にしてくれた。なんでそうなるのかさっぱりわからないが、ついでに体についた返り血も綺麗にしてくれたのでさっぱりとした気分になった。
「ありがとうございます」
「これくらいサービスというやつです。それじゃ私はここで」
と、神様は美しくウインクして駅へと歩いていった。私も電車で帰るのだけれど一緒に行っていいのかな。綺麗に別れたのにまた会うとか微妙な感じにならないかなと思い、少し遅れて駅に向かうと、改札口で神様が場内に入れずにもたついていた。
「どうしましたか?」
「ああ、いや、ちょっとチャージ忘れててね」
神様がICカードを見せる。
「神様なんだから神様パワーで入ればいいじゃないですか?」
「そんなことをしたら人間社会が大変なことになってしまうだろう。悪いけど千円くらい貸してくれないか」
神様は真面目な表情で言った。
「はあ。いいですけどちゃんと返してくださいね」
「もちろんだとも」
私は神様に千円札を渡した。神様はもしかしてわりと頭悪いのかもしれない。
私は神様と別れた後、なんやかんやで帰宅した。ただいまあ、と家に入るとキッチンで妹が料理をしていた。
「あれ、リリカ料理してるの?」
「してるの」
「一人で作れる? 手伝おうか」
「一人で余裕すぎろちんですわ」
「じゃできたら呼んでね」
「あーい」
私は部屋に戻って神様製の着物から普段の部屋着に着替える。今日はやけに着替えが多い日だなと思った。
それからベッドに寝転がって舞美からの恋愛相談にのる。どうやら舞美の彼氏はセックスがしたいらしい。別にセックスくらいならいいんじゃない。妹なんて今日レイプされてたよ、と答えた。
でも彼ピあたしのことめちゃくちゃにしたいんだってえ。めちゃくちゃだよめちゃくちゃ/// ちょっと不安なんだけどー★
知るかボケ、と返答しなかった私はなかなか自制心が強い人間だと思う。代わりに、それだけ愛されてるってことだよ、と送っておいた。
しばらくしてから妹に呼ばれたのでリビングに行く。肉料理だった。食べる。美味しくなかった。
「美味しい?」
「あんまり」
「えー」
妹は大袈裟にがっかりしてみる。
「血抜きちゃんとしてないから肉が生臭い。一から捌くときにはそういう所もちゃんとやらないとだめだよ」
「はーい」
「これは元から肉があんまりよくなかったから仕方ない部分はあるけど、だからこそ調理はしっかりしないとね」
「はーい」
「余った部分はどうしたの?」
「ゴミ袋入れといた」
「明日燃えるゴミの日だから捨てよう」
私は妹の料理を食べる。強姦魔の肉質は悪く、血抜きが不十分なせいもあって美味しくなかった。
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