泣いた鬼.一
キョウ、強さなんていらないよ。
これは母の言葉であった。
ジョソと戦う姿は見たことがなかったが、俺に刀の扱いを教えてくれた母の強さは幼い時分の俺でもよくわかっていたし、だからこそ母の言う言葉の真意はよく理解できなかった。
キョウ、ジュソはね、本当は可哀想なんだ。
度々本島から島に派遣されてジュソ退治を請け負う母の言うことなのだから、ますます理解ができなかった。
キョウ、強さなんていらない。刀の扱いが上手いだとか、力持ちだとか、そんな強さは本当はいらないんだ。そんなのは本当の強さじゃない。
目の前では真面目に聞かない振りをしていながらも、その言葉は俺の胸に深く残った。
本当の強さじゃない。そんな言葉にぶっきらぼうに頷きつつも、ならば本当の強さとは何だと、心の中で何度も問うた。
許す強さ……。キョウ、例えば、許すことも強さなんだよ。
ほら、あんたまたあの娘とケンカしたでしょう。
あんたが本当に強い子なら、あんたから謝りなさい。
そういえば、よく近所の年上の娘とケンカをしていた気がする。
だめだよ母さん。許すなんて、俺にはできないよ……。
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