Take a break(つかの間の休息)
美女が集まるお茶会!?
七章
ワシントン州 ワシントン大学(教員室) 二〇一五年六月九日 午後一時〇〇分
香澄からの依頼を引き受けたフローラは、自宅のパソコンを使いAMISAのデータベースへアクセスしている。当初は教員室で作業をする予定だったが、内容が内容なだけに“自宅の方が集中出来る”と判断したフローラ。
そのため今日は大学には来ておらず、代わりに香澄・ジェニファー・エリノアの三人が彼女の教員室にいる。以前から“香澄は紅茶を淹れるのが上手なのよ”とジェニファーから聞いていたので、直接本人に“紅茶を淹れて欲しい”と頼む。
相手がエリノアであることを意識した香澄は、サークル旅行で購入したラベンダー入りの茶葉を使用することにした。カップに入れた茶葉に熱々のお湯を注ぎ、あっという間に特製の紅茶が完成する。
「さぁ、どうぞ。……淹れたてで熱いから、気を付けてね」
“ありがとうございます”と一言お礼を言ってから、最初に紅茶の香りを堪能する。その後ゆっくりと一口飲み干し、紅茶の味を堪能するエリノア。それはまさに、噂通りの美味だった。
「香澄の淹れた紅茶……本当に美味しい。ジェニーの言った通り、香澄って紅茶マニアだったんですね!?」
突拍子のないエリノアの一言を聞き、思わず耳を疑ってしまう香澄。真面目な性格の香澄にとって、〇〇マニアと呼ばれるのはお気に召さない様子。
「え、エリー。いきなり何を言うの!? た、確かに紅茶好きではあるけど……」
珍しく動揺している香澄の姿を見て、一人首をかしげているエリノア。不思議そうな顔で香澄を見つめながら、
「どうしたんですか、香澄。どこか気分でも悪いの?」
エリノアが問いかける。“何でもないわ”とその場をつくろいながらも、必死に自分の気持ちを抑える香澄。
そんな香澄へさらに追い打ちをかけるかのように、ジェニファーから聞いたことをそのまま伝えてしまうエリノア。
「これもジェニーから聞きました。お友達のマーガレット・ローズという女性の趣味に負けないくらい、香澄も紅茶に夢中って聞きましたけど……本当ですか!?」
最終的に親友のマーガレット・ローズと同じくらい、趣味に熱中している女性という疑惑をかけられてしまう香澄。今は劇団員として働いているマーガレットだが、ホラーやオカルト関連の雑誌を読む・映画を観ることと、女性の趣味にしては少し個性的。
よりによってオカルトが趣味のマーガレットと、自分の趣味を一緒くたにされた香澄の心中は穏やかではない。だがエリノアが純粋な瞳で見つめてくるため、その場の雰囲気を壊さないように満面の笑みを見せる香澄。
それからも教員室では楽しい世間話が続き、年頃の女性たちは話に花を咲かせていた。だが不思議なことに、香澄の視線が時折ジェニファーへ向けられることが多々ある。
『……気のせいかしら? 今日は妙に香澄の視線を感じる気が……』
だが香澄は何も言わないため、ジェニファーも特に気にすることはなかった。
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