第5話 彼者誰

バタン!


私は勢いよく玄関のドアを開けた。

すると、奥からぱたぱたという音が聞こえた。


「あらあら、そんなに走って帰ってこなくても良かったのよ。

でも、嬉しいわ。さぁ、ご飯の支度が出来ているわよ。」


おばあさんが出迎えてくれて、暖かくいい匂いもする。

しかし、私はそれどころではないのだ。


「あのね、百合子さん。

あの絵画が、山奥の館に住んでいる夫人が持っているかもしれないの!」


私が早口でそういうと、百合子さんの顔が曇った。


「そう…でも、あるかどうかは分からないのでしょう?」


「でも!少しでもある可能性があるなら、私は確かめたいんです。」


「…凜音ちゃん、あの館には行ってはだめよ。その夫人の方とは知り合いだから私が訪ねておくわ。」


「えっ、百合子さんその夫人と知り合いなんですか?」


「えぇ、だから大丈夫よ。

さぁ、それよりお誕生日会を始めましょう?今日は凜音ちゃんの好きなものばかりよ?」


今まで見たことなかった百合子さんの顔からいつもの顔に戻った。


何かあるのは間違いない。

このまま待っているだけでいいのだろうか?


しかし、聞いてもらってあるかないか確かめた方がいいだろう。そちらの方がどう考えても懸命だ。


…今日は百合子さんが、作ってくれた料理をたくさん食べることにしよう。

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