レゲー特有の理不尽と偏りが想像以上にきつい件

水瀬 由良

第1話 レゲー開始

 俺にとってゲームは身近なものだった。

 家にはしっかりと据え置き、携帯を問わずハードはそろっていたし、話題作もそろっていた。もっとも、RPGしかなかった。

 母親曰く

「のんびりできるし、ファンタジーが好き」

 父親曰く

「どうせ買うなら夫婦で出来るもの」

ということらしい。

 

 そろっていたゲームを俺がしないなんてことはなく、結構小さな頃からやっていた。今のハードはこのハードになってから四代目だそうで、俺がそのハードを知ったのは小学生のころの二代目からである。

 もちろん、RPG専門である。


 ゲームをすることで怒られることはなかった。父親がゲーム関係の仕事をしている。ゲーム好きがそのまま職業にしてしまったタイプで、むしろゲームから学ぶことは多いとまで言っている。

  

 そんなわけで、俺にとってゲームとは気軽に楽しめるもので、そんなに難しいというイメージはない。いざとなれば、攻略サイトを見ればいい。


 ただ、父親曰く

「今のゲームはヌルゲーだからな」

ということらしい。 

 

 しかし、そんなことはないと思う。

 父親はシリーズで12作目まで出ている国民的RPGを一作目から全部しているらしく、初期の頃の鬼畜っぷりはすごかったぞと言うが、それは子どもすぎて、ゲームが理解できなかったってことだろう。


 思い出補正ってやつだ。


 それは俺にもある。

 ストーリーもあまり理解できなかったしてなかったし、耐性とかそういうややこしいのはさっぱり分からず、とりあえず、最強装備ってコマンドで装備して、ゴリ押し。基本的にレベルを上げて進めばよかったわけだが、とにかく難しく感じたのは確かだ。


 時々、動画サイトで昔のゲームのRTAを見たりもするが、クリア時間を見てもそんなに長くない。効率化を進めているというのはあるだろうが、基本的なボリュームが少ない。そうなると難易度もそれほどではないだろう。

 で、そんな感じでレトロゲーム、通称レゲーを考えていた俺はとんでもないミスをしてしまったのだ。


「おお、かなで、死んでしまうとは情けない。お前にもう一度機会を与えよう。再びこのようなことがないようにな。では、ゆけ。奏よ」


 目の前には王様。……また、死んだのか。このセリフも聞き飽きたが、仕方ない。俺は今、レゲーの世界にいる。


 そして、そのレゲー特有の理不尽さにうちのめされている。

 レゲー特有理不尽その1。

「説明が少ない」

 レゲーはソフトに入る容量がとてつもなく少ない。人々の説明も少なくなる。結果、とりあえず外を歩けということになる。西の方向に町があるらしいが、それだけだ。

 右も左も分からない状況で放り出すか? 全く理不尽だ。


 レゲー特有理不尽その2。

「エンカウントというべきか、敵の多さ」

 とにかく敵が多い。少し歩いたら敵、逃げてもすぐに敵。しかも、雑魚が雑魚じゃない。ダメージ計算がどうなってるか知らないが、がんがんHPが削られる。

 回復手段? 呪文が使えない脳筋仕様にどうしろというのか。

 薬草? 高くて買えない。


 他にいろいろあるが、とりあえず、厳しいのが「その2」の敵の多さだ。

 最初にとりあえず、旅立てと言われて城を出て、マジでビビった。

 見渡す限り敵の群れ。ゲーム自体はランダムエンカウントのはずなのだが、実写になるとこうなるのかと。


 動画サイトで「町から出たとたん0歩エンカww」「連続一歩エンカww」とか笑っていたが、笑い事じゃない。

 さっき死んだのも連続エンカでボコられたからだ。

 くそっ。理不尽だ。


 こんなことになったのは全てヤツのせいである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る