第2話 2/12

愛しいリカオンへ、


私の愛しいリカオン、邪気を怖れることはない。

全ては迷夢なのだから。


ダンタリオンの呪文からも

コカトライスの嘴からも

アガリアレプトの水薬からも

サラマンダの炎のからも

ルシフェの狡知からも

ヘリコンの噴煙からも

マルコシアスの牙からも

スフィンクスの問答からも

メデューサの眼光からも

私が守ってあげるから。


その不条理なお城から出て、私の隣でおやすみなさい。

その美しい額に口づけて、あなたを嫋嫋(じょうじょう)と包み込み、

憂悶には一指たりとも触れされない。



私の愛しいリカオン。

あなたは左手を差し伸べるだけで良い。

そうすれば全てが夢魔だと知るだろう。



あなたのヤマバクより

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