3章 その7
休日が終わり、月曜日。再び学校生活の一週間だ。晴天の昨日とは打って変わって、また曇り空で暗い日だった。
リュミエールは休日を挟んでしまったために話をするタイミングを逃してしまったが、先日起こった『魔女』に関する出来事を忘れていなかった。放課後、校舎の裏にアラン、ヨアンを集め、そのことについて話すことにした。
「あの……リュミエール、この前はごめんなさい……」
ヨアンはやや小声で謝罪した。彼はリュミエールを置いて逃げてしまったことについて詫びる。
「もういいのよ、こっちこそごめん。強引に振り回しちゃって」
リュミエールはあっさりと許した。そもそも彼女は何事もなく無事だったため、最初から気にしていなかった。
「君がそんな風に謝るなんて……」
アランがヨアンの横で一人意外そうに驚いていた。
「あら、なあに? 謝るのがそんなに変かしら?」
「先週の引きずり回しっぷりを見ると……ねえ?」
アランは目をヨアンに合わせた。ヨアンは苦笑して彼の顔を見つめ返した。
「ま、まあ、その辺にして。ところで、話ってこの間の森の話だよね?」
ヨアンはそう言って切り出した。リュミエールはやや食い気味に話を始めた。
「そうね。この前見た、身体の白い人について話をしたくて集まってもらったの」
リュミエールはやや神妙な顔つきになって二人に言った。
「あの『白蝋の魔女』のことだね」
ヨアンがつられて眉をひそめながら答えた。
「そうよ、あの話」
リュミエールは言った。
「うん……リュミエール、君は何事もなかったようだけど、本当に何もされなかったの?」
ヨアンは聞き返した。
「何もされなかった。見た目はちょっと不気味な感じだったけど、悪い人じゃなさそうだった」
「でも、斧とか持ってたぜ。あれは人を殺すときの目だった」
アランが彼女に向かって言った。
「そんなことないわ! ただ薪を割っていただけよ。もっとあなたが思っているより温かみのある目よ」
リュミエールがアランに反論した。
「まあ、君が生きて帰ってきたってことは噂ほど危なくはないのかもしれないが……もし何か心の底で企んでいたりしたら大変だよ。もしかしたら、知らないうちに呪いをかけていて、何日か後に死んでしまうなんてことも……」
「そんなことはない! それは街の人たちの勝手なイメージよ! 彼女は魔法も呪いも使えないわ! だから、まともに話をしたこともないのに、変な想像はもうやめましょうよ。偏見だわ」
「お、おう……そうか」
アランは彼女の迫力に気圧されて体がすくんだ。彼は熱い反応に少し驚いた様子だった。
「でも、見ただろ、あの黒いローブに白い肌。見た目からして噂通りだし、俺たちと同じ人間とは思えない」
アランがそう言うと、リュミエールはがばっと彼の両肩を掴み、顔をグイっと近づけた。
「だ・か・ら! 実際にまた会いに行きましょうよ。話せばきっとわかる。彼女も曇りの日なら会いに来てもいいって言ってたの。あたしも彼女に聞きたいことがある。だから、一緒に行きましょ? ね?」
「え、また行く気なのかい!?」
「もちろん。あなたたちも彼女のことを誤解している。あたしはその誤解を解きたいと思っているわ」
「わ、わかったわかった! 怖いけど行くよ、行けばいいんでしょ。まったく、結局君は僕らを振り回す気じゃないか」
アランは最初から彼女に抵抗するのを最初からあきらめたようだった。抵抗するより彼女に従った方が楽だと思った。彼女を説得するのはそれだけ骨のようにそのとき思っていた。彼は続けて言った。
「でも、どうして『魔女』の肩なんか持つんだい?」
「だって、かわいそうじゃない。理不尽に人から差別されて、森の奥に追いやられて。だから、アランやヨアンにも手伝ってほしい」
リュミエールはアランの肩を一層強く掴んでいた。
「わかったから、だからその肩を離してくれ。もう力づくでも連れて行く気満々じゃないか!」
アランが叫ぶと、リュミエールは「あっ、ごめんなさい」と小声で謝り、彼の両肩から手を離した。そして、彼女は少し深呼吸をして気を落ち着かせた。
「本当に、またあそこに行くの……?」
ヨアンが弱弱しい調子で言った。
「もちろん。でないと、話せないでしょ」
「でも、親にバレたら何て言われるか……。一昨日だって、親を誤魔化すのが大変だったんだ」
「だから、バレないようにいくの。この前みたいに時間が遅くならないように気を付ける。道はわかりやすかったし、もう覚えたから大丈夫よ」
リュミエールは親指を立ててヨアンの方向に向けた。それを見た二人は少し不安そうな表情になった。
「なあ、リュミエール。今日は曇りの日に行くって話だったよな? 今日はその曇りの日だけど、まさか今から行くなんてことは……?」
アランは恐る恐る聞いた。
「なんで行かないと思ったの?」
リュミエールは不思議そうな顔をして聞き返した。
「だよな……わかった、わかりました。どこへでもついていきますよーだ!」
アランは半ば投げやりな調子で言った。つい先々週までのアランは、まさか女の子に振り回される日々がやってこようとは想像もつかなかっただろう。アランは既に彼女に抵抗することをやめ、付き従うことを自然に選択するようになっていたのだった。
三人は学校を後にして再び森へ向かった。
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