2019年夏 静岡県下田
下田旅行の序文
そして今年は下田である。
何がと言うと、奥さんとその両親との旅行だ。
ほとんど毎年恒例となりつつある。
人には色んな事情がある。
みなさんにとって旅行とは何だろうか。
質問がザックリ過ぎて意味がわからない。
質問を変えよう。
みなさんは、旅行は好きだろうか?
僕は多分、そうでもない。
旅行に行く前に特別テンションが上がるでもない。事前に下調べを入念にして、こことあそことあっちのタピオカを飲み比べるぜ!などと言う事もない。
でも、電車や飛行機に乗るのは好きだ。
ワクワクする。
特に昼あたりにビールを開けて、普段と違う景色を眺めながら飲むというのは格別なものがある。ほとんど、ここがピークだ。クライマックスが早過ぎないか、と自分でも思う。だが仕方がない。
下田。
いつからタピオカは飲み物という認識になったのだろう。タピオカは食べるものなのではないか? せめて間をとって舐めるのではないか?(どうでもいい)
夜中に起きて、こうして下田の宿でタピオカについて考えている。奥さんが寝息を立てていて、隣の部屋ではその両親が眠っている。善良な人たちだ。と同時に、下田についても考えてみる。何も出てこない。下田は「したのたんぼ」と書いて「しもだ」と発音するのだ。そしてペリー。
1854年3月に黒船を引き連れて下田に現れたマシュー・ペリー。今から165年も前の話だ。身長は2メートル近くあり、声と態度が大きく、水兵の間では陰で「熊おじさん」と呼ばれていた。かつらをかぶっていた。
やめよう。
wikiを齧って、教科書みたいな事を書くんじゃない。
友人に下田へ行くと報告すると、下関と勘違いしていた。下仲間ではある。だがそっちはだいぶ遠い。山口県。本州の尻尾の方にある。いかにもペリーが来航しそうな場所と名前であり、勘違いもやむを得ないと思う。
コミュニケーションについての講座に出席した事がある。僕は自分のコミュニケーション能力に不安を抱えており、自ら希望してその社内プログラムに出席した。
「人には合意したいという欲があります」
と講師が言った。
「人と人は本質的に理解し合えませんが、話し合いとそのテクニックによって、合意に至る事は可能なのです」
希望に満ち溢れる言葉だ。
人と人との間に関わらず、僕は自分自身の合意を得たいが為にこうして文章を書いているような気がする。教科書的な事を書くでもなく、ペリーについて思いを馳せるでもなく、人を煙に巻く言い方をするのであれば、こころの水平線に黒船を発見する為にこうして文章をしたためている次第だ。
心の水平線に黒船は来襲しているか?
かつらをかぶった
例によって、この旅行記を書くにあたってのルールは「出来るだけ素直に・正直になること」だけだ。それだけがここから先に書かれる文章にとって唯一の美点でありますよう、願わずにいられない。
どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
(下田って、おい)
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