【エッセイ】しょんぼり旅行記

江戸川台ルーペ

2018年夏 鎌倉

鎌倉を旅する

 柏から品川まで行き、そこで熱海方面行きの東海道線に乗れば鎌倉に着く。だいたい二時間も掛からない程でそこは鎌倉だ。とても近い。


 今回は奥さんの両親と一緒に鎌倉に来た。

 僕と、奥さんと、その両親と一緒だ。

 そこには未婚の人からはともかく、既婚の方々からしても

「ん?」

 という複雑な事情が考えられなくもないかも知れない。


 嫁の両親と旅行、偉いね!

 であったり、

 限定マスオさんだね!

 であったり、

 色んなご意見があると思う。


 僕としてはシンプルに

 1・旅行に行こうと誘われる

 2・旅費は不要だと言われる

 3・断る理由はない

 以上の3点から導かれる結果として、今こうして鎌倉にいるという事になる。そこに僕の意思や判断などは「とても少ない」。あるいは、もっとキリキリと自分を削ぎ落とすような、本質的自分探しの苛烈な文章を書けよ!、と仰る方も多いかも知れない。もしかしたらそうした何かを期待をされる方がいるのかも知れない。


 だが、少なくともここから先の文章においては、ご期待に添えるようなモノは何もないと断言できる。本当に何もない。身銭切らずして本当の自分探し無し。これはガンジーが遺した偉大な言葉だ。知らんけど。遺したかも知れない。ガンジーの自分探しって相当ヤバそうだな。ガンジーにはブレないでいて欲しい。


 命題「僕が書いた生温い嫁の家族と旅行した文章を誰が読みたいのか?」


 限りなくゼロだ。勝算がない。サッカーであればドイツに対する江戸川台少年サッカー団のように、IPS細胞に対するSTAP細胞のように、重力に対する人類のように、ここから先に書かれる文章の勝利は絶望的だ。


 でも、だから何だっていうんだ?


 勝利を求める為に文章を書くのは誰だ(研究する人?)

 快楽を求める為に文章を書くのは誰だ(快楽って程ではないけど僕だ)

 それを読んで誰がどう思うか心配するのは誰だ(僕だ)


 手元のiPhoneで二度と見返さない写真を撮るのはもう飽きた。

 じゃあ僕なりの、僕だけの文章で一瞬を切り取る事で、何かを残す事も試してみても良いのではないか?

 公平でなくてもいいから、出来るだけ正直に何かをこの旅行中に書き留める。


 正直であること、というのはとても難しい事だ。

 それだけが、これから先に書かれる文章において、唯一とも言える美点となるように願うしかない。

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