第6話 チート? いえ、努力の結果です!
「現在、神々が勇者育成の時間を稼いでいる。 だがそれも持って半年だそうだ。 それまでに何とか自分の力を高めてモノにしてもらいたい。 タダ君は剣術を習っていたという話だから剣術を。 それと特殊スキル【甲殻】とやらを軸に鍛錬して行く」
時間がとにかく惜しい。
なので長所をトコトン伸ばす鍛錬をする事に決まった。
剣術ではレッドさんの他、近衛騎士隊の方々が協力してくれるそうだ。
「私はミハエル・ロビンソン。 よろしく頼む」
「僕はダニエル・クリフ。 よろしく」
「俺はランディス・カッシーニだ! よろしくな!」
ミハエルさんは青い髪で槍の使い手。
ダニエルさんはくすんだ金髪で剣と盾の使い手。
ランディスさんは赤毛で斧の使い手。
体格はランディスさんが大柄でガッシリとした肉付き。
ミハエルさんは身長が高く細身。
ダニエルさんは眼鏡を掛けた中肉中背。
ちなみにレッドさんは銀髪の長髪で色白のイケメンでダニエルさんと同じく中肉中背の細マッチョだ。
「この三人は近衛騎士隊の中でも特に選りすぐりの腕利きだ。 本当なら魔術師も欲しいとこではあるのだが……宮廷魔術師長のナハトラ様や我等騎士団を束ねるアーウィン騎士団長に却下されてしまった。 理由は正式な勇者様達の成長を優先させるためだ。 我々もある程度は魔法が使えるのタダ君には悪いがそれで対応させてためう」
「いえ、教えて頂けるだけで十分です」
「ありがとう。 そう言ってもらえるとこちらも助かる。 タダ君が邪神を倒せるよう全力を尽くそう」
こうして邪神討伐に向けての鍛錬が始まった――のだが、開始早々問題が起こった。
それは、僕に稽古を付けてくれる筈の三人のスタミナが僕に付いて行けなかったのだ。
「き、君は化物か!」
「三時間も全力で動き回って息一つ乱れないとは……。 しかも、僕達の打ち込みが掠りもしないなんて……」
「団長や隊長、副長並に体力がある奴に初めて会った」
「……私が言うのも何だが、君は普段からどういう鍛錬をしてるんだ?」
まるで人外を見るように僕に視線を向ける四人の騎士。
別に僕が異常に強い訳じゃない。
単に伯父さんや伯父さんの流派――月影流宗家や門下の人達が化物じみた強さなだけだ。
僕はその人達の練習に付き合ってたら馬鹿みたいに体力が付いて逃げ足だけはすばしっこくなったのだ。
想像して欲しい。
木刀の一突きでコンクリートの壁に穴を空け、更には鉄筋を居合の一太刀で切断してしまう様な人達を。
一太刀でも当たったら痛いなんてものじゃ済まない。
そりゃ全力で逃げまくるよね!
普通だったらその時点で剣術なんて辞めてるだろう。
事実、伯父さんには悪いけど、僕も辞めようと思ってた。
だけど、気付いたら僕もその化物の仲間として周りから認められてしまっていた。
しかも月影流の宗家から伯父さんに命令が来たらしい。
”月影流を会得できる人材は貴重。 絶対に逃がすな!”と。
その時の伯父さんの済まなそうな顔は今でも良く覚えてる。
そうして続ける事を余儀なくされた結果、今の僕が完成したわけだ。
「しかし……この三人以外の有能な者は皆、勇者の鍛錬に駆り出されている。 だが、ミハエル達がこのザマでは鍛錬が続けられん。 どうしたものか……。 せめて他の勇者達と同様に【大地母神の護符】を使えたら」
「【大地母神の護符】?」
「神々から借り受けた勇者育成の為の神具の一つだ。 その神具が発現する結界の中ではケガや致命傷を負う事がなく、体力やマナも徐々に回復するという」
そんな便利な道具があるのか。
まあ、そんな凄い道具、流石に僕のスキル【甲殻】で再現するのは無理だろう。
そう思い、一応試してみる。
ケガをしても治り死んでも生き返る。 体力やマナも回復する。 巻き戻る体の状態。
巻き戻ると言えば昔、伯父さんの用事で一緒に行った海外にある島で現地の人に焼いて喰わせてせてもらったオウムガイ、美味かったな……じゅるり。
ああ、いけないいけない。 味を思い出して思わず涎が出てしまった。
あれ?
灰紫色の粒子が目の前に発生し、それが集まって何かを形作っているぞ?
うねうね……
ソレはさっき僕が思い出していたオウムガイだった。
自分の存在を誇示するように触腕を元気にうねらせている。
どうやら【甲殻】スキルが発動したようだ。
レッドさんが顔を真っ青にして尋ねてきた。
「……タダ君、その悍ましい生き物は何だね?」
「これはオウムガイという生き物です。 さっき、レッドさんが言った大地母神の護符とか言う道具を僕の【甲殻】で再現出来ないか試したらコレが生まれたんです。 ちなみに、食用可でとても美味しいですよ」
「食用はともかく、コレが【大地母神の護符】と同じ効果が?」
「取り敢えず試してみましょう」
僕はバテている三人の近くにオウムガイを置いてみた。
「――おおっ!? これは凄い!!」
「打ち身や擦り傷がなくなったよ!!」
「力が漲ってマナも満タンに回復したぜ!!」
どうやら成功したようだ。
結界の効果がどれくらいか調べてみたらオウムガイを中心に約100㎥位の範囲だった。
「これで鍛錬が捗る――ん? どうしたタダ君?」
僕がオウムガイをジーと見つめているのを不思議に思ったのかレッドさんが聞いて来た。
「……コレ、食べてみませんか?」
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