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「もう、そうちゃん聞いてる?」
「え?」
「だめよリン、コイツは酒の事となると、他の会話は耳に入らないんだから」
「昔っからそうよね」
「え、なに、何の話?」
時計の針は深い夜を指していて、斉藤君はもう帰っていて、いつの間にかミケが合流していて、ボトルにはもう少ししかクリュッグが残っていなかった。
「三年、思っていたより早かったわねって話」
「あぁ」
「そうちゃんはもう少し独立しないかなって思っていたから、最初聞いた時は驚いたわぁ」
三年前の五月十三日、俺はこの店をオープンした。リンの言う通り、修行先のバーが店を畳まなければもう少し修行していたかもしれない。
「まぁ良い機械だったしね、十年修行させてもらったし」
「十年ねぇ、あの頃は若かったわぁ」
「リンもまだ男の子の身体だったしね」
高校を卒業してすぐ、俺は夜の世界に足を踏み入れた。その時同じようにこの世界に入って来た二人と、なんだかんだ今もこうやってつるんでいる。こうやって店の開店記念にも来てくれる。あの頃はいけ好かない奴らだったけど、友情ってのはどこでどう結ばれるか分からないものだ。
「ミケは、おっさんになったわねぇ」
「リンが化けものなだけよ」
「あらやだ、昔から自慢のお顔には一度もメスを入れたことありませんのよ?」
身体は弄りまくったけどな。
「う、あたしをおっさんだっていうなら、はなちゃんだってもうおっさんなんだからね!」
何その反撃。ダメージ俺にしか来てないけど?
「ミケもあの頃はもっと可愛かったのにな・・・いやあの頃は田舎の野球少年って感じだったな」
「芋って感じだったわよね」
野球帽と泥だらけのユニホームが似合いそうな感じの。
「う、うるさいわねっ! アンタたちだって同じようなもんだったでしょ!」
「俺は野球部じゃなかったし」
「あたしも坊主じゃなかったし」
「そういう事を言ってんじゃないのよ!」
石の上にも三年、とはよく言うけど、五年後も十年後もこうやってワイワイ祝うことが出来たら、いや、出来るように頑張るしかねぇな。
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